今回は、「属人的株式」について紹介します。
これは、会社法の大原則である「株主平等原則」の例外です。
株式の譲渡制限の設定がある会社であれば、属人的株式を規定することができます。
例えば、同族オーナー会社において、
息子に事業を継いでもらうために社長の株式のほとんどを息子に譲渡したものの、
社長が生きているうちは好き勝手に経営させないようにする場合などに、
この属人的株式を活用することができます。
「属人的」とは、その対象者のみに対して有効であるという意味です。
例えば、「代表取締役が保有している株式についてのみ」一定の効力を及ぼすというものです。
定款に定めることで以下の権利につき、株主によって異なる取扱い(属人的な扱い)をすることができます
(属人的株式の設定には、総株主の半数以上、かつ総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要)。
①剰余金の配当を受ける権利
②残余財産の分配を受ける権利
③株主総会における議決権
また、この株式の設定について登記の必要はありません。
例えば、以下のような規定をすることができます。
(議決権の個数)
第○条 当会社の株主は、株主総会において、その所有する株式1株につき1個の議決権を有する。
2 前項の規定にかかわらず、当会社の株主であって取締役である者は、株主総会において、
その有する株式1株につき100個の議決権を有する。
上記の例は、取締役である株主の議決権を1株につき100個としたものです。
取締役が株式を保有している場合のみ議決権が増えるので、
取締役が取締役以外の方に株式を譲渡した場合は、その株式の議決権は原則通り、1株につき1個となります。
このような属人的株式は、以下のような場合に活用することができます。
(1)オーナー社長の議決権を大きくする
→相続対策などのために、オーナー社長の株式のほとんどを持株会に移転したが、
オーナー所有の株式について議決権を大きくする属人株を設定し、総会での権威を維持する。
(2)第三者株主を迎え入れ、同族株主の議決権を大きくする
→第三者株主によるクーデターが起きないよう、同族株主の議決権を大きくする。
(3)経営に貢献する役員への配当を高くする
→議決権数は他の役員と差をつけていないが、会社への貢献度が高い役員には
配当による恩恵を与えるため、剰余金の配当率を高くする。
混同しがちなものとして、「種類株式」があります。
種類株式は「人ごと」ではなく、「株式ごと」に扱い方を設定するものです。
また種類株式を設定した場合は登記が必要になります。
貴社の経営課題にあった属人的株式の導入について、一緒に考えましょう。
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是非、ご活用ください。
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