◆借金だらけの社員を懲戒処分できるか?
そもそも懲戒処分とは、職務行為に関して会社の秩序等を乱した
社員に対して一定の不利益処分を行うものです。一方、借金や破産
などといったことは職務遂行とは直接は関係のない私生活上の問題
です。従って借金や破産などが原因でその社員の給料が差し押さえ
られたとしても、そのことによって会社の業務に影響を及ぼすこと
は通常ないので、懲戒処分の対象とすることは出来ません。
※ただし、以下の一定の場合には従業員を解雇することが出来ます。
次にあげる資格を持つものは、自己破産した場合にはその資格を
失います。したがってこれらの資格がなければ雇用契約を結ばなか
ったであろう場合(たとえば、生命保険の外交員として採用したので
あって、その他の業務につける予定がない場合など)は、雇用契約
本来の労務の提供が出来なくなったわけですから、解雇することが
出来ます。
・証券外務員 ・旅行業者 ・宅地建物取引業者 ・公認会計士
・税理士 ・弁理士 ・司法書士 ・不動産鑑定士 ・弁護士
・有価証券投資顧問業者 ・生命保険募集人 ・損保代理人
・商工会議所会員など…
しかし、この場合の解雇は懲戒解雇ではなく普通解雇となります。
◆会社にまでサラ金集者の督促がきたら?
私生活上の借金などが直接会社の業務に影響を及ぼすものではない
としても、会社にまでサラ金業者から頻繁に電話がかかってきたり、
あるいは会社を尋ねてきたりした場合は、他の社員が不安に思ったり、
本人も仕事が手につかず業務に影響を及ぼしてしまうこともあるかも
しれません。しかしこういった場合に問題なのは債務者である社員で
はなく、そういった方法で取立てをする債権者に問題があるのであって、
本人を懲戒する理由にはなりません。
また、実際に給料を差し押さえられた場合は、裁判所の命令に従い
給与の一部を債権者が指定する方法で支払うための手続きをとること
になります。しかし、このような手続きをとるからといって業務が混乱
するわけではないので、懲戒処分はやはりできません。
◆対処法
借金などが原因でその社員の職務遂行がおろそかになったり、仕事に
身が入らなかったりする状態が続いた時は、上司は借金の解決策の相談
などを含め、早めに注意をしましよう。
また、こういった社員を辞めさせたい場合は、懲戒解雇は出来ないので、
退職勧奨をするしかありません。借金に困っている社員はまとまったお金
を必要としているので、ある程度の退職加算金を提示すれば退職勧奨に
応じる可能性はあるでしょう。
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