◆遅刻・欠勤は労働契約上の義務の不履行
労働者が定時に出社して労務を提供することは労働契約上の義務です。
したがって業務開始時間に遅刻してその時間について労務を提供しない
ことや、無断欠勤をしてまったく労務を提供しないことは、労働契約上
の義務の不履行として懲戒処分の対象になります。
では、どのような処分をすることができるでしょうか?
最初から厳しい処分はNG
勤怠不良の社員について、何の制裁措置もとっていなかったのにいき
なり解雇してしまうと、裁判で不当解雇とされてしまう場合があります
(☆解雇権濫用の法理:後述)。前回の「能力のない試用期間中の社員
の処分」でもご説明しましたが、使用者には労働者を教育する義務が
あり、労働者に更正するチャンスを与えなければなりません。
実際に処分をする際には、以下の点に留意する必要があります。
①ルーズな勤怠管理を是正し、遅刻や無断欠勤に対してはその都度
注意をしましょう。その際は証拠を残す意味合いも含め、書面で
警告することが重要です。
②軽い処分を積み重ね段階を経て処分を重くし、それでも遅刻や
無断欠勤が治らない場合に最終的に解雇することができます。
書面で警告→譴責処分など→それでも態度を改めなければ懲戒解雇
☆解雇権濫用の法理とは?
労働者の生活を守るために、使用者が行う解雇には制限が設けられて
います。判例では「解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇
しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処する
ことが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認すること
ができないときは、当該解雇の意志表示は解雇権の濫用として無効にな
る」と、解雇する権限に制約を設けています。
この判例から、勤怠不良の社員に限らず、社員の解雇については、
①理由・原因
②反省の有無
③業務に及ぼした影響
④解雇の対象となった行為(遅刻・欠勤など)に対する従来からの
取扱い
といった事情を勘案して、その解雇が有効かどうかを判断することに
なります。
尚、解雇権濫用の法理は平成15年の法改正により明文化され、労働
基準法18条の2に明記されています。
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