昨今の不況を受け、製造業を中心に、日本を代表するような大手
メーカーでも、大規模な人員削減策を発表していますが、今のとこ
ろほとんどが派遣従業員や期間従業員といった非正規雇用労働者が
対象になっています。
特に派遣従業員の削減については「派遣切り」と呼ばれ、派遣契約
期間中の中途解除や、契約期間満了による雇い止めによって生産ライ
ンにおける過剰人員の調整が行なわれています。
今回はこのような「派遣切り」に関する法律上のポイントをご説明
したいと思います。
◇◆労働者派遣とは◇◆
◎派遣元
(分かりやすくするため、以下「派遣会社」とします)
◎派遣先
(同様に、以下「派遣先企業」とします)
労働者派遣では、派遣従業員を直接雇用するのは派遣会社である
のに、仕事に関する指揮命令をするのは派遣先企業という関係に
なっているところが特徴です。従って、派遣従業員に関する直接の
雇用義務を負っているのは派遣会社であって、派遣先企業・派遣
会社間の「労働者派遣契約」はあくまで企業取引上の契約となり
ます。企業取引上の契約ということは、企業間の取り決め次第では、
契約の中途解除もあり得るということです。
ただし、労働者派遣契約は一般取引上の契約とは異なり、従業員
の生活に直結するものなので、厚生労働省の指針として、労働者
派遣契約の中途解除に関して、次のような派遣先企業の責任が規定
されています。
①派遣会社の合意を得るとともに、予め相当の猶予をもって申し
入れること
②派遣先の関連会社での就業をあっせんする等、派遣労働者の
新たな就業機会を確保すること
③②ができないときは、遅くとも30日前までに予告し、予告しない
場合は、派遣会社に派遣従業員の賃金相当分の損害賠償を行
なうこと
このような指針に派遣先企業が違反しても直接の罰則はありませ
んが、昨今の報道でも話題になっているように、派遣従業員との
大きなトラブルに発展することは十分考えられますので、どうして
も派遣従業員の人員整理が避けられない事態となった場合には、
派遣会社と十分な協議を行なったうえで、ここでご説明した指針
などに則った適切な手続きをとることが重要といえます。
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