4月になり、気温も少しずつ暖かくなってきました。
今回は、最近相談の多かった「兼業禁止」について判例とともにご紹介します。
▲兼業している従業員への対応
ある会社の人事担当者から「社内に兼業している従業員がいるので、懲戒処分にしたいが可能か?」と相談がありました。 その会社の就業規則の懲戒事由には、兼業禁止規定がありました。
▲兼業禁止規定自体は有効だが・・・
まず、就業規則の兼業禁止規定自体については、判例によると、全面的に兼業を禁止するものでなければ、有効であるとされています。 (小川建設事件 東京地決 昭和57.11.19)
▲懲戒は場合によっては可能
実際に懲戒処分が可能かどうかについては、判例を見ても下記の通り、ケー スバイケースとなっています。
※どちらのケースも就業規則の懲戒事由に兼業禁止規定あり。
1.兼業をしていた従業員が、連続して欠勤をし、会社の業務に支障をきたしたとして、懲戒解雇を有効と判断。 (阿部タクシー事件 松山地判 昭和42.8.25)
2.始業時刻前に2時間兼業をしていた従業員への懲戒解雇を、会社の業務に格別支障をきたさないとして、
無効と判断。 (国際タクシー事件 福岡地判 昭和59.1.20)
このような判例から考えると、兼業している場合は、会社の業務に支障があるか無いかで、懲戒処分の可否が判断される可能性が高いといえます。
先述の会社で兼業していた従業員は、年に数回程度のアルバイトをしているだけで、遅刻・欠勤などは無く、格別業務に支障をきたす状態では無かったため、懲戒処分ではなく、従業員と話し合い、今後、会社の業務に支障をきたすようなことがあれば懲戒処分になる可能性がある旨指導しました。
▲実務上のポイント
1.就業規則の懲戒事由に兼業禁止規定があるかを確認し、無い場合は、記載する。
2.実際に、懲戒処分にするかどうかについては、会社の業務に支障があるか無いかを客観的に判断し、支障
がある場合は、懲戒処分の方向で対応し、支障が無いようであれば、規定に違反しているとして改善を促
し、それでも繰り返すようであれば、懲戒処分の可能性を示すなどして、牽制するのがよいでしょう。
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