「社員が会社の就業規則に違反した」「新しく採用した社員が、会社
の期待する能力を持っていなかった」こうした問題を引き起こす社員が
いれば、会社は制裁その他、何らかの対処を検討することでしょう。
ただし、対処の仕方によっては法律に抵触し、大きなトラブルに発展
する可能性があります。
今回から幾つかのテーマを取り上げて、このような問題を引き起こす
社員に対し、会社はどのような対処をすればよいのか、法律上のポイント
をご説明していきたいと思います。
一般的に、会社は3ヶ月程度の試用期間を設けています。今回は、この
試用期間中に能力や適正がないと判断した場合に、会社側は解雇できる
のかという問題についてご説明します。
◆ 試用期間だからといって無制限に解雇はできない
民法では、期間の定めのない雇用契約は、その雇用関係を使用者側
・労働者側のどちらからでも解約することができると定めています。
しかし、使用者側から解約を申し出るときは、労基法によって、その
権限を制限されているため、法の要件を満たさない限り解雇すること
はできません。
試用期間は、判例上では「使用者に解雇の権限が留保されている期間」
と解釈されており、正社員に比べて解雇が認められ易くなっています。
しかし、試用期間中とはいえ無制限に解雇できるわけではありません。
◆ 合理的な理由が必要
解雇が有効なものとして認められるためには、「客観的にみて合理的
な理由があること」、「使用者側が労働者のその能力について改善でき
るように指導・教育した実績があること」などが必要になります。
能力・適正がないということは、本採用拒否の合理的な理由として認
められるものですが、もし解雇した労働者から訴えられた場合、能力や
適性がないということを裁判で立証するのは簡単なことではありません。
では、使用者側はどのような対策を採ればよいのでしょうか?
◆具体的な対処法
具体的な指示や時間を与えて、問題のある社員が仕事をその指示通り
にできたかどうかを記録し、能力や適正の有無を目に見えるようにし、
もし不十分であった場合はこれらを理由として解雇することができます。
◆試用期間を延長することも一つの方法
上記のとおり、試用期間中であれば裁判において解雇が多少認められ
やすくなるため、試用期間を延長し能力不足を明らかにするのもひとつ
の方法です。
延長にあたっては、就業規則にその定めが必要ですが、定めがない
場合でも、本人と合意することで延長することができます。その際、
本採用に至らない理由や延長する理由をしっかりと説明し、現状を
改善できない場合には本採用できないということを伝えましょう。
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