久々のブログ更新となりました。みなさん、いかがお過ごしでしたでしょうか。
今回から少し趣旨を変えまして、知ってためになる労働判例を紹介していきたいと
思います。
今日は、労働時間についての判例です。
▲労働時間の定義▲
労働時間は、賃金とならんで労働条件の中でとりわけ重要なものです。労働
時間とは、使用者が労働者を現実に「使用者の指揮命令の下で労働させてい
る時間」(実労働時間)をいい、労働者が使用者によって拘束されている時
間ではありません。
長時間労働は、労働者の健康・生命にとって脅威になるだけではなく、ワー
クライフバランスが叫ばれる今日、その実現の為に出来るだけ抑制される状
況にあるのではないでしょうか。また、長時間労働の抑制は、割増賃金の支
払いを抑え、人件費の削減にもつながります。
▲労働時間かどうか
労働時間とは実労働時間であると述べましたが、労働時間に該当するか否か
については争いが起きることも多く、その判断は、判例を通じた解釈により
確立されてきました。
▲これも労働時間
拘束されている時間ではなく労働している時間が労働時間であるならば、例
えばトラックの運転手が工場が開くまで自由に出来る時間などの、いわゆる
手待ち時間は、労働時間に該当せず、賃金を支払わないでもいいように思え
ます。
しかし、判例では
「労働基準法の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている
時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指
揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定ま
るものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決
定されるべきものではないと解するのが相当である。」(三菱重工業長崎造
船所事件 最一小判平成12・3・9)
と判断さています。
また、ビル管理会社の従業員の仮眠時間が労働時間に該当するか、という別
の判例でも
「労働基準法の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている
時間をいい、実作業に従事していない仮眠時間が労働基準法の労働時間に該
当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置
かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものと
いうべきである。・・・・<中略>・・・したがって、不活動仮眠時間であ
っても労働からの解放が保障されていない場合には労働基準法上の労働時間
に当たるというべきである。」(大星ビル事件 最一小判平成14・2・28)
と判断されています。
すなわち、労働からの解放が保障されていない場合には、使用者の指揮命令
下に置かれているものとして、労働時間と判断されることになり、賃金の支
払い対象になります。
▲労務管理の見直しによる人件費の抑制を
今まで労働時間とみなしていなかった時間が、従業員の訴えにより労働時間
と判断されると、未払い賃金やそれに伴う割増賃金まで支払うことになり、
思わぬリスクになります。
従業員に効率的な仕事をさせ、労働時間を短縮させるには、まずは適正な労
務管理が必要になります。そのためには、就業規則に残業届の事前申請など
のルールを規定することにより、労働時間を守らせるのも有効な手段です。
まずは、就業規則の見直しをお勧めいたします。
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