今回は、「単元株制度」についてご紹介します。
定款によるリスクマネジメント~その2~では、属人的株式を活用して、後継者に議決権を集中させる方法をご紹介しました。
ただ、この属人的株式は非公開会社(株式に譲渡制限がついている会社)でなければ導入することができません。
そこで公開会社、非公開会社のいずれにおいても同様の効果が期待できるものとして、「単元株制度」を導入する方法があります。
◆単元株制度とは・・・
単元株制度とは、定款で定めた一定数の株式をまとめたものを「1単元」とし、
1単元の株式について1個の議決権を与え、単元株式数に満たない株式には、議決権を与えないこととする制度です。
例えば、1000株を1単元と設定した場合、900株しか有しない株主には議決権が与えられず、2500株を有する株主には、議決権が2個与えられることになります。
会社法施行規則において、単元株式数の上限は1,000及び発行済み株式の総数の200分の1に当たる数とされています。
◆導入事例1
株主の数が多く、総会の運営が煩雑である場合に、「1000株で1単元の株式」を割り当てる定款変更を行うことで、
1000株に満たない株式しか持たない株主に対する手続き(総会出席や議決権行使に関する手続き)を行わなくてもすむようにする。
<定款記載例>
(単元株式数)
第○条 当社の株式の単元株は、1,000株とする。
◆導入事例2
<事実関係>
・X株式会社の株主は、Aのみ。
・Aの推定相続人は、子B(Aの後継者)及び子C(X社とは無関係)。
・BとCの兄弟間の仲はよくない。
<想定されるリスク>
A死亡後にBとCが相続争いをして、Bに議決権を集中させることが困難となるおそれがある。
<活用例>
・定款変更により、甲種類株式及び乙種類株式を設定する。
・既発行株式を甲種類株式と乙種類株式に転換する。
・定款変更により、甲種類株式については1株で1単元の株式を、乙種類株式については5株で1単元の株式を割り当てる。
・Aは遺言書を作成し、甲種類株式についてはBに、乙種類株式についてはCに相続させる。
<定款記載例>
(単元株式数)
第○条 甲種類株式の単元株は、1株とする。
2 乙種類株式の単元株式数は、5株とする。
◆単元未満株主の権利
1単元にみたない株式であろうと、あくまで独立した1個の株式であるので、
株主が会社から経済的利益を得ることができる権利(剰余金配当請求権、残余財産分配請求権等)は、
原則として認められます。
また、株主が会社の管理運営に参加し、経営に参与することができる権利(訴え提起権、会計帳簿閲覧請求権等)
も原則として認められますが、議決権の行使や議決権の存在を前提とする権利(株主提案権等)は認められません。
◆単元株のその他の機能
株価の低い企業が株式の大きさを引き上げよう(株価を上げよう)とする場合に、
相当額の費用を要する株式併合を行う代わりに、単元株制度を導入することで株式併合と同様の効果を実現することができます。
また、株価が高い企業においては、株価を引き下げるために株式分割を行いながら、
分割前の1株に対応する数の株式を1単元とすることにより、株主管理費用等を分割前と同等にすることができます。
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是非、ご活用ください。
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