添乗員派遣会社の派遣添乗員が、不払い残業代の支払いを同社に
求めた労働審判で、東京地裁は7月18日、残業代の支払いを命じる
審判を下しました。
審判で争点になったのが、派遣添乗員に適用されてきた「事業場外
みなし労働時間制」が適正かどうかという点です。
添乗員の労働時間は長い日で1日15、16時間になりましたが、
みなし労働時間制を適用されてきたため、賃金は定額の日当(1万
2千円~2万円)だけで、残業代はつかなかったそうです。
この「事業場外みなし労働時間制」は、労働者が事業場の外で働く
ために、使用者が労働時間を算定することが困難な場合に使われる
制度で、外勤営業職などに対してよく使われています。
しかし、審判では「日程表などで労働時間を指示されており、労働
時間の算定は可能で、事業場外みなし労働は適用できない」と判断し、
会社側に残業代約14万円の支払いを命じています。
この審判で示されたように、安易に「事業場外で労働=みなし労働
時間」と考えるのは早計です。労働基準法によると、このみなし労働
時間を適用できるのは「労働時間を算定することが困難な場合」であり、
具体的には通達により、下記のような例に該当する場合は、労働時間
を算定することが可能なので、みなし労働時間は適用できないとして
います。
◆◆労働時間の算定が可能な場合◆◆
①プロジェクトチームを組んで外勤をしたり、外部でのイベント運営
を行なうときのように、グループ単位で外勤をし、そのメンバーの
中に労働時間を管理する者がいる場合。
②外勤中、一つの訪問先での仕事が終わるたびに会社への報告が義務
付けられたり、常に携帯電話等で会社と連絡を取れる状態にあり、
実際に当日の訪問先や業務内容などについて、管理者から頻繁に
指示を受けたりしている場合。
③前述した添乗員やルート営業のように、予め日程表や訪問予定表
などで当日の訪問先や業務内容、帰社時間等のスケジュールが明確
になっていて、実際にそのスケジュール通りに業務を行なって会社
に戻ってくる場合。
従って、現在事業場外みなし労働時間制を採用している場合は、
改めてその対象となる業務をよく見直してみることが大切です。
その適用を否定されてしまうと、本審判と同様に実労働時間として
算定された時間に応じて時間外労働が発生するため、「未払い残業代
の支給」を命じられるという、非常に大きなリスクを背負っている
状態にあるからです。
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