先日、私の担当クライアントで有給休暇消化の件で問い合わせがありました。
有給休暇の消化を申し出てきた社員というのは、1年契約の有期雇用契約を
締結している準社員でした。
この会社では、毎年3月21日付けで1年の有期契約を新たに締結しています。
当然、私の指導のもとで、有期契約の自動更新などという危険な労務管理は
行っておらず、毎年、契約期間満了の1ヶ月以上前に更新手続きを行い、場
合によっては雇い止めの手続きを行い、また、更新の際には自動更新ではな
く、次回の契約は保証されるものではない旨を伝えるなど、期待権を極力排
除した有期契約の運用を行っています。
そして、この会社では毎年4月1日を基準日に有給休暇の一斉付与を行ってい
ます。
そのような中、この社員は4月20日付けでの退職を申し出てきました。そ
して、3月13日から退職日まで、28日間の有給消化も併せて申し出てき
たのです。
なんと、この社員は契約が更新されることを前提に、4月1日に有給休暇が
新たに12日付与されることも計算して、このような申し出をしてきたのです。
申し出をした時点で、この社員の有給休暇の残日数は16日。このまま契約
が更新されると、有給休暇が4月1日に新たに有給休暇12日が付与され、
3月13日から4月20日まで28日間の有給消化が可能になるという計算
です。
当然会社側としては、気分の良いものではありません。
そこで私は、新たな契約を締結していない中で4月20日付けでの退職はあり
えないということ、また、契約更新後、退職日まで1日の労務提供もなされな
い有期労働契約を更新する合理性もないと判断し、3月20日付けでの雇い止
めを提案しました。
前述のように、契約更新を適切に行ってきた経緯も踏まえ、実行に移しました。
こうすることで、4月1日に新たに有給休暇が付与されることもなく、28日
の有給休暇の消化を阻止し、残日数だけの16日間の有給消化だけで抑えるこ
とができました。
退職時の有給消化を阻止、抑制することは法律上なかなか難しく、経営者のみ
なさんにとっては頭の痛い悩みではありますが、状況が重なるとこのようなこ
とも可能となってきます。
有期契約で社員を雇用している経営者のみなさんは、契約更新を怠らず、社員
に期待権を持たせない形で丁寧に行っていくようにしていきましょう。
帰り際の魔術師
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