今回は、前回に引き続き印紙税法でいう「契約書」とは何なのか?ということを考えていきたいと思います。前回の②から⑦についてご説明します。
【事 例】 ~発注確認書~
発注確認書
株式会社乙社御中
甲社 担当丙 ㊞
弊社(甲社)は、貴社に対し、下記の業務を発注しておりますが、この発注に対する内容確認をお願い致します。内容等を確認して変更その他がなければ、破線部分で切り離し、貴社の担当者印を押印し弊社までご返送ください。
平成22年10月30日
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◎ 発注業務 カレンダーの制作 3,000部
◎ 発注金額 金 壱百五拾萬円
◎ 引渡予定日 平成22年12月1日
◎ 納 入 先 戊社に直接納入
以上のとおり、発注内容を確認いたします。
平成22年11月5日
株式会社 乙
担当丁 ㊞
≪解 説≫
事例にある発注確認書は、発注内容を確認した上で切り離して相手方に交付する形態のものになります。申し込みに対する応諾の事実を証明する書類となる点線より切り離した部分が印紙税法上の契約書に該当します。
また、カレンダーの制作という請負契約であるため、請負という課税事項、カレンダーの制作という重要項目(請負の目的物)が記載されていることから、課税文書に該当します。
このような当事者間における意思表示の合致が認められるものは全て、印紙税法上の契約書に該当します。
②契約の成立もしくは更改事実を証すべき文書をいう
最初に作成される当初契約書のほか、その後作成される更改契約等も当初の契約内容とは異なる事項を証明するための文書であることから、当然に契約書として取り扱うということです。
③契約の内容の変更もしくは補充の事実を証すべき文書をいう
②と同様に、当初契約書のほか、変更契約、補充契約も当初の契約内容を変更したり、新たに補充するという事項を証明するための文書も契約書として取り扱うことになります。
ただし、この場合は変更や補充をする項目が「重要な事項」に該当するときに限ります。
④念書や請書等の契約の当事者の一方のみが作成する文書を含む
契約に至る過程として、申込の誘引(見積)、申込み(注文)、契約(請書)という流れが商慣習上できあがっていることから、請書等は、見積書、注文書と経由して、最後に作成されるというのが一般的です。よって念書や請書等は、契約当事者の一方のみが署名押印する文書になりますが、申込みに対する応諾の事実を証明することが明らかであるため、印紙税法上の契約書に該当するのです。
⑤契約の当事者の全部もしくは一部の署名を欠く文書で当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含む
これは文書に押印がなくても、署名がなくても、当事者が契約の成立の事実を了解していれば、印紙税法上の契約書に該当するという意味です。印紙税では契約については契約当事者双方の署名、押印がなければ成立しないとはいっていないのです。
⑥契約には予約を含む
民法では「予約」は契約には該当しませんが、印紙税では「予約」も契約に含むとされています。「予約」とはある契約を将来成立させるということを約する契約をいいます。予約契約書と本契約書の双方を作成する場合には、双方ともに印紙の貼付が必要となります。
⑦契約の消滅の事実を証する目的で作成される文書は含まない
印紙税は、契約成立によって生じる「経済的な効果」に対する担税力に着目して課税される税目でありますので、「経済的な効果」が消滅する契約の消滅は担税力がないものとみなして課税対象にはしていません。
≪POINT≫
1.「契約内容等を変更する契約書も課税文書の可能性がある」
当初の契約内容等を変更、補充、更改する契約書についても、当初の契約書として取り扱われる場合があります。
2.「印紙税の課税文書は名称や表題に左右されない」
契約書に該当するかどうかは、その文書の名称や表題で判断されるのではなく、その内容によって判断されます。名称や表題が変わっても印紙税の可否判定そのものは変わりません。
kao。