2008年もあと少しで終わろうとしています。今年もいろいろなことがありました。税制改正・会計基準発表・その他の事項と項目は多岐に及びます。
ざっと思いつくままに今年のイベントを並べてみると、どうなるでしょうか。以下にランダムに記載します。
1. 節税商品として活用していた逓増定期保険が原則資産計上に。
このお陰で、節税が難しくなりました。この保険は大変使い勝手が良く、多くのお客様が導入しました。
「いきすぎた節税」と批判され、税務上の制度として後退したわけです。
そもそもこれは課税の繰り延べであって、永久に課税を逃れる手段ではありません。
これにより企業の納税は増えるのでしょうが、財務省は喜んでも、中小企業と保険会社は泣いています。これでいいのでしょうか。
2. リース会計・税制の改正
本年4月から適用になったのですが、消費税の取り扱いに混乱がありました。
当初は賃貸借処理の場合でも、消費税法上仕入税額控除は契約した期に全額計上することとなっていました。
日税連が7月に平成21年度税制改正項目として提言していたのは知っていましたが、11月になって、突然、賃貸借処理の場合は、分割控除も認めると国税局が言い始めました。
国税庁の公表の当日に把握したので、早急にお客様にご説明できたので、何とか会計事務所としての体面は保てましたが、突然でびっくりしました。
要は従来の処理と全く異ならなくなります。「リース会計・税制の改正のポイントはここなんです。仕入税額控除は全額仮払消費税として計上しなければなりません。面倒ですけど消費税の納付額は少なくて済むので良かったですね。」としてお客様に説明していた会計事務所としては、再度の説明に追われました。
これも企業側に有利だからこんなに早かったと考えるのは穿った見方でしょうか。
これにしても課税の繰延べでしかないのに。
隣の同僚は11月申告でリースの貸し手の決算だったので、泣いていました。
ちなみに公表は11月21日でした。申告期限ぎりぎりです。
3. 棚卸基準の公表
原価法の場合申告調整が必要ですが、評価方法の届出には柔軟に対応してくれるようです。
4. 事業承継円滑化法
ニュースとして知ってはいたのですが、漠然と80%評価が減額されるならば良いな、と考えていました。
いざ公布の段階に来てまじめに情報収集し、要件を確かめると、対象外のケースが多く、しかも納税の繰り延べでしかなかった。
自分の不勉強さと普段の情報の処理態度に問題があったと反省させられました。
5. 公益法人改革3法
次から次へと新情報が出て、対応に追われました。
公益認定等委員会の議論が進むに従い、全容が明らかになってきましたが、今年情報収集に最もコストが掛かったと考えます。
6. 四半期財務諸表報告制度
基準自体は、たいした内容ではないのですが、東証の要望は決算日後30日以内の短信公表でした。
多くの企業・監査法人は徹夜の日々が続いたでしょう。
投資家の情報提供は迅速にする趣旨は大いに分りますが、ものには限度というものがあります。
これでは上場企業の経理に携わる方は人間的な生活ができなくなります。
こういうおかしな事態はいずれ見直されると思います。
弊事務所のお客様には上場子会社も多く、親会社の決算の取りまとめの日数を取るために、親会社への報告期限が短くなりました。
基本は税金計算ですので、簡便法採用の場合は助かるのですが、原則法になるととたんに大変になりました。
なるべく事務負担のないように親会社も考慮していただきたいものです。
7. 減価償却税制改正
これも大変でした。
8. 工事進行基準公表
全く中小企業のことは考えていないと思いました。
工事進行基準を採用するための事務コストは膨大です。
上場企業との取引が多い企業は災難です。
9. ガソリン税暫定税率廃止と復活
10. ガソリン料金の高騰と下落
9.と合わせて産業界は対応に追われました。
夏の時点で現在の状況を予測することができた人はいないと考えます。
11. タバコ増税の回避
個人的には一箱1,000円にしてくれればあっさり辞められたのにと思います。
12. 長寿医療制度(後期高齢者医療制度)
社会保険料控除ができる人とできない人が発生しました。
口座振替なら良くて、年金天引きならだめというおかしな事態です。
それも口座振替を選択できるようになったのは、10月になってからで、誰もシステム上の不備に導入段階で気づかなかったのでしょうか。不思議です。
13. 住宅ローン減税の住民税の取り扱い
今年の確定申告では注意が必要でした。
14. 内部統制基準
いまだに内部統制を整備するのは文書化をすることだと考えている企業・公認会計士・導入コンサルタントが多いのには驚かされます。
もう一度実施基準をよく読むべきだと考えます。
米国のSOX法と日本の内部統制は全くの別物です。
監査法人とコンサルタントは大もうけしたでしょうが、この作業によって、非人間的な生活を強いられた人は多いと考えます。
文書化することで安心して、「暗黙知」として存在していた日本の優秀な内部統制は逆に脆弱なものとなると考えるのは私だけでしょうか。
ISO導入企業の実態を多く見てきた私にとっては、整備より運用のほうがはるかに大事だと言えます。
内部統制を文書化し、監査法人のOKをもらって「また、来年やるか」と安心している企業は自己の内部統制がすこぶる脆弱であることに気づくべきです。
15. 国際会計基準
ずっと国際会計基準とのコンバージェンス(収斂・一本化)が日本においては議論されてきました。
米国が国際会計基準を導入することで、独自基準を採用する国は日本を始めきわめて少数派になります。
今後、日本も国際会計基準に一本化すると予想しますが、税務と会計は益々乖離するでしょう。
16. 原材料価格の高騰・下落
下落はいいのか悪いのか。難しいですね。
17. 欠損金の繰り戻し還付制度復活に関する議論
今復活しないでいつ復活するのでしょうか。
議論している場合ではない。
喫緊の課題であると考えます。
18. 定額給付金
なんともせこい。12,000円とか20,000円とか助かると考える人もいるかもしれません。
財源は赤字国債だそうですが、国債は国の借金であり、いつかは返さなければならない。
国の収入は税金ですから、定額給付金としていただいたお金は、将来税金として納めることになるのです。
桁が一つ違えばそれなりの効果はあったと思います。
内需拡大は国民の「気分」次第だと思います。
でっかくバーンとやって盛り上げて欲しかったです。
ここら辺の感覚は広告代理店とかの人のほうがあるかもしれません。
そういうスキルのある人に相談ぐらいすればよかったのにと思います。
12,000円とか20,000円とかでは一世帯あたり50,000円位でしょう。これでは何に使ったか分らずなくなってしまいます。
これが50万円なら、少し貯蓄に回したとしても、何らかの形で使用するはずです。
19. 漢字が読めない総理大臣
これについては同情的です。
私も読めない漢字というよりは、読みを間違えていた漢字がありました。
「有価証券の下落」「価値の下落」等は会計の世界では頻繁に使われる言葉です。
この「下落(げらく)」を「からく」とずっと読んでいました。私が法学部出身なので、周囲は法律用語でそう読むのだと思っていたようです。
指摘されたときは「ぽかん」としていました。
教えてくれた人もオズオズと言ったからでしょう。
広辞苑等あらゆる辞典を調べても「からく」と読む例はありませんでした。
恥ずかしくてたまりませんでした。長い間このことでからかわれ続けました。
麻生さんの今の気持ちが良く分ります。
ちなみに高校のときに使った教科書に「詳説世界史」というものがありましたが、これも長らく「くんせつ世界史」だと思っていました。
20. メタボ検診
メタボリック症候群検診(メタボ検診)が本年4月から実施されています。
今年健康診断を受けた人は、40歳以上ならば腹囲を測られたはずです。
異常値が出て治療に移行すれば、医療費控除が可能ですのでご確認ください。
今年は忙しさにまぎれて、健康診断をまだ受けていません。先日やっと決断して、新年早々受けるつもりです。
なかなか受けなかったのは、腹囲測定が嫌だったことと、血圧に自信が無いからです。
実は、半年ほど前、調子が悪くなり医療機関を受信したところ、下の血圧が90を超えてしまいました。
今は薬を飲んでいないのですが、某生命保険会社の営業攻勢に会い、保険に加入することを同意しました。
告知書に正直に血圧の件を記載したら、ぷっつりと音信不通になりました。
「保険に入れないんだ」というのは衝撃的なことでした。
ですので、これも今年のトピックです。
21. サブプライムローン問題
言うまでもありませんね。大変な事態にあります。米国のビッグスリーが破綻の危機に陥るなんて誰が想像できたでしょうか。
金融危機が実体経済に確実に影響しています。
何が起こるか分らない事態です。
破綻などありえない会社が破綻するということは、大手に金融機関も絶対に破綻しないと言うことはできません。
5年前(2003年)にはこの話題で盛り上がったのですが、最近は全く話題にも上がらず、預金保護の限度額などどこも意識していませんでした。
最近は、1,000万の預金保護の限度額を超えた部分についてどうしようかと相談される方もいます。
要件さえ該当すれば、保証協会の保証による借入を申し込んでください。
会社によって事情は違いますが、少々の金利を払っても、今は現金を確保時期です。
これは長期性の借入ですので、財務体質も改善する場合もあります。
特に、月々の返済額が劇的に減少するケースもありますので、ご検討ください。
等々。
やはり今年もイベントがいっぱいありました。忙しい1年でした。
皆様、良いお年を。