先日、ある知り合いの社長のところに、民事裁判の訴状が届いた。内容は、心筋梗塞で障害者になって数年前に退職した社員が、「自分が心筋梗塞を発症したのは会社の強いた“長時間労働”に起因する。損害賠償として約2千万円の支払いを求める。」というものだった。
この社員は、当初、労働基準監督署に労災の認定を求める手続きをしていたが、長時間労働の十分な記録がないため、地元の労基署はこれを否認していた。会社はこの判断に安堵していたところであったが、その後、この社員は上部組織の労働保険審査会に再審査請求(裁判の控訴のようなもの)を行い、結果、一転して労災の認定を受けることとなったのだ。その後、弁護士を立て会社に対する責任を追及してきたという流れだった。
国が定めた「長時間労働が労災認定される基準」は、「発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合、または発症前2か月間ないしは6か月間にわたって1か月あたりおおむね80時間を超えて時間外労働が認められる場合は、業務と発症の関連性が強いと判断される。」というもので、今回のケースでも6ヶ月にわたって月73時間強の労働をした認定され、労災が認められたようだ。会社には従業員を健康で安全に働かせる「安全配慮義務」があるため、一旦、労災が認定されたということは、今後行われる民事訴訟において大いに不利になることは間違いない。
今回のケースで特徴的な点は、労働時間の認定にあたり、本人の申告や同僚の証言等で一日の実働時間を推計し、これに勤務日数を乗じたデータが尊重されたということだ。会社は、タイムカードなど記録させておらず勤務表のみで管理していたのが、反対に裏目にでることとなった。
今後への教訓としては、「あいまいな労働時間管理は会社にとっても危険がある」ということだろう。
名ばかり副理事長
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