平成21年8月31日に、厚生労働省が税制改正要望を出しました。あくまでも要望の段階であり、衆議院選で民主党が大躍進したため、平成22年度の税制改正はどのようになるか分かりませんが、厚生労働省がどのような要望を出しているのか参考までにご紹介したいと思います。
(1)医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の創設
持分のある医療法人において、出資者の死亡に伴い相続人が相続税の納税資金を確保するために出資持分の払戻しを請求する等により、医業の継続に支障を来すことのないよう、持分のある医療法人のうち、持分のない医療法人への移行を検討するものについて、以下の特例措置を創設する。
(ⅰ) 出資者の死亡に伴い相続人に発生する相続税の納税を5年間猶予するとともに、5年以内に一定の要件を満たす持分のない医療法人に移行した場合に、猶予税額を免除する。
(ⅱ) 相続人や出資者が出資払込額の払戻しを受けた場合等に残存出資者に発生するみなし贈与の課税を5年間猶予するとともに、5年以内に一定の要件を満たす持分のない医療法人に移行した場合に、猶予税額を免除する。
解説
持分の定めのある医療法人が抱える課税上の問題点を解決しようとするために、創設を検討している内容だと思います。既存の法律では、課税されずに移行するためには、特定医療法人や社会医療法人並みの要件が求められています。ここでいう一定の要件が、特定医療法人や社会医療法人よりも緩ければ、移行することが可能な医療法人も出てくるのではないかと思います。
(2) 医療法人に係る法人税率の引き下げ
医療法人について、その経営の安定を図り、地域医療の担い手としての役割をより積極的に果たせるようにするため、医療法人の法人税率を22%に軽減する。
解説
平成21年の税制改正により中小企業者等については、年所得800万円以下の部分について税率が22%から18%に引き下げられました。しかし、年所得800万円超の部分については、30%という税率が適用されます。30%で課税される部分を22%に軽減して欲しいというのが、今回の要望です。
今回の要望の目玉は、(1)の持分ありの医療法人から持分なしの医療法人へと移行する場合の納税猶予及び免除になります。ここでいう一定の要件がどのようになるかで、使い勝手のある制度になるのか、今までどおり移行は難しくなってしまうのかが決まります。引き続きこの要望については、その動向に注目していきたいと思います。
その他、今回の要望には、既存の措置の延長なども盛り込まれておりますので、ご興味のある方は厚生労働省のホームページをご覧下さい。
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