平成20年8月29日に、厚生労働省が税制改正要望を出しました。あくまでも要望の段階であり、また衆議院の解散も囁かれていますので、平成21年度の税制改正はどのようになるか分かりませんが、厚生労働省がどのような要望を出しているのか参考までにご紹介したいと思います。
(1) 医療法人に係る法人税率の引き下げ
医療法に基づき設立される医療法人について、その経営の安定を図るとともに医療法人の活動を推進するため、医療法人の法人税率を公益法人の収益事業と同率の22%に軽減する。
解説
この要望は毎年のようにしていますが、今までなかなか通っていません。
(2) 社会医療法人に係る固定資産税等の非課税措置の創設
救急医療、へき地医療、産科・小児科医療などを守るため、都道府県の医療計画に基づき、特に地域で必要な医療の提供を担う社会医療法人について、救急医療等確保事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む。))を行う病院及び診療所の用に供する建物等に係る非課税措置を創設する。
また、都道府県の医療計画に基づき、特に地域で必要な医療の提供を担う社会医療法人について、看護師等の養成所に係る非課税措置も創設する。
解説
昨年の改正で、社会医療法人の法人税については収益事業から生じた所得のみに対して課税するという優遇制度が設けられました。今年の要望では、建物等や看護師等の養成所に係る登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税などを非課税にしようという要望が出ています。
(3) 社会保険診療報酬等に係る消費税のあり方の検討
社会保険診療報酬は国民に必要な医療を提供する高度の公共性を有していることから消費税は非課税とされ、医療機関や保険薬局の仕入れに係る消費税については社会保険診療報酬において措置されているところであるが、今後、消費税を含む税体系の見直しが行われる場合には、社会保険診療報酬等に係る消費税に関する仕組みや負担等を含め、そのあり方について速やかに検討する。
解説
医療機関や保険薬局などは、患者さんから消費税を預っていないのに、薬品や診療材料等を仕入れた際に、消費税を支払っているため消費税の支払損(いわゆる損税)が生じています。この問題を解決するには、抜本的な消費税の改革が必要となります。
次の(4)~(6)の項目は、現在適用されている優遇措置の存続を要望するものになります。
(4) 社会保険診療報酬に係る非課税措置の存続(事業税)
医療とりわけ社会保険診療の高い公共性に鑑み、社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置を存続する。
(5) 医療法人の社会保険診療以外部分に係る軽減措置の存続(事業税)
医療事業の安定性・継続性を高め、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保に資する医療法人制度を支援するため、医療法人の社会保険診療以外部分に係る事業税の軽減措置を存続する。
解説
医療機関は、事業税について上記2つの優遇措置を受けています。消費税の損税問題を解決する代わりに、事業税については優遇措置を撤廃するとなってしまっては意味がありません。事業税の優遇措置を残しつつ消費税の損税解決となってもらいたいものです。
(6) 特別償却制度の適用期限の延長
医療保健業を営む個人又は法人が、取得価格500万円以上の医療用機器を取得した場合に、取得価格の14%の特別償却を認める特例措置の適用期限を2年間延長する。
また、医療安全に資する医療機器を取得した場合に、取得価格の20%の特別償却を認める特例措置の適用期限を2年間延長する。
解説
平成21年3月31日で適用期限の切れる特別償却制度の期限延長を要望する内容になります。特別償却は、医療機器を導入した初年度に通常の償却費に上乗せして償却費を計上することが出来ますので、初年度の節税効果の期待できる制度になります。
今回ご紹介した要望は、厚生労働省で出している平成21年度税制改正要望の一部に過ぎません。他の要望も見たいという方は、厚生労働省のホームページをご参照下さい。
詳しく知りたい方はこちらまで→厚生労働省税制改正要望
最近のコメント