決算隊ブログ⑧
~「遡求」ってなに?~
手形が不渡りとなった場合、裏書人等に遡求が行われます。「遡及」ではありません。前の所有者に遡って「請求」するので、「遡求」といいます。
ちなみに、手形は、一般に、中小企業で使用され、大企業では、現金決済が主で、手形はあまり用いられません。
信用供与で用いられるものを、約束手形、決済手段として用いられるものは、為替手形、これが物品の引渡に絡むと、荷為替手形、資金融通目的で振り出されるものを、融通手形(結局、これを銀行で割り引いてもらうので、会計処理上は割引手形)、お互いに融通手形を出し合うと、書合手形といいます。
さて、裏書人等に遡求した場合、どういう会計処理になるでしょうか。
<遡求を受けた側>
①手形を売り払ったとき
現金預金 / 受取手形
②手形所持人から遡求を受け、支払ったとき
不渡手形 / 現金預金
<遡求をした側>
①手形が不渡りとなったとき
不渡手形 / 受取手形
②裏書人等に遡求して、支払を受けたとき
現金預金 / 不渡手形
不渡りとは、支払期日を過ぎても、支払資金の不足等のため、額面金額が引き渡されず、金融機関で決済できないことをいいます。これが6ヶ月以内に2回続くと、銀行取引停止処分を受けることになり、決済の停止、資金繰りの悪化、信用の低下につながり、結局、事実上の倒産となります。
遡求を受け、受け戻した手形は、見た目は変わりませんが、支払期日を過ぎ、もう流通性を失っており、支払を受けられるか危ういため、会計上も、受取手形とは区別されます。また、金額面でも、不渡手形には、手形の額面金額のみならず、法定利率による満期から支払日までの利息、及び拒絶証書作成費用、通知費用などの費用が含まれます。
ちなみに、法定利率による満期から支払日までの利息には消費税はかかりません(非課税)。
では、手形は既に売り払っているのに、なぜ遡求を受けるのでしょうか?
手形を裏書した人(裏書人等)は、振出人又は名宛人が払わなかったときは、私が代わりに支払います、と宣言したとみなされるからです。これは、手形の流通を促進するため、法が認めたいわゆる担保責任です。これを、償還義務(請求する側から言えば、遡求権)といいます。
例をとって説明しましょう。手形が以下のように流通したとします。
上島(振出人)→肥後(第一裏書人)→寺門ジモン(第二裏書人)→手形所持人=遡求した人
手形を振り出した上島が「俺払わない」といったら、第一裏書人の肥後、又は、第二裏書人の寺門ジモンが「俺が払う」と手を挙げなければなりません。でも、上島が払うと言えば、「どうぞどうぞ」ということなります。第一裏書人の肥後が支払うと、第二裏書人の寺門ジモンに再遡求することになります。
このように、手形にはさながら熱湯風呂が存在するのです。
吉田こと田中