平成24年度税制改正については、東日本大震災の影響で昨年から保留になっていたものや期間が延長されたもの、現況に合わせて新たに設定されたものなど様々な内容が盛り込まれました。
こちらのブログの原稿を執筆している平成24年3月28日現在、まだ法案は審議中ですが、そのうち今回は、所得税関係について3回に分けて主な内容を解説していきます。
(以下 ↓・・・減税 ↑・・・増税)
〔その1:給与所得控除の見直し〕↑
給与所得控除とは、給与収入に対して所得税・住民税を課税する際に、勤務に伴って発生する必要経費の概算額として給与収入から差し引かれる控除額のことをいいます。
給与所得控除額は年収に応じて決まりますが、現在の制度では控除金額に限度がありません。つまり、年収の高い方は収入に応じて差し引くことが出来る控除額も高くなっていきます。
しかし、給与収入がどんどん増えるからといって、かかる経費も際限なく増え続けるかというと必ずしもそうではありません。例えで言うなら、お給料が増えたらスーツ代や新聞図書代も連動して値上げになる訳ではありません(お金をかけた贅沢な暮らしにはなるかもしれませんが・・・)。
そこで今回の改正において、給与所得控除額に上限が設けられました。
給与等の年間収入金額(A) |
給与所得控除額 |
|
現行 |
改正後 |
|
180万円以下 |
A×40% |
同左 |
(下限65万円) |
||
180万円超360万円以下 |
A×30%+18万円 |
|
360万円超660万円以下 |
A×20%+54万円 |
|
660万円超1,000万円以下 |
A×10%+120万円 |
|
1,000万円超1,500万円以下 |
A×5%+170万円 |
|
1,500万円超 |
245万円 |
〔その2:給与所得者の特定支出控除制度の見直し〕↓
その1で説明しましたように、サラリーマンのような給与収入の方の所得税の計算上、収入から差し引くことができる必要経費相当額ということで給与所得控除制度が認められていますが、場合によっては実際にかかった支出(=実額)が必要経費として認められるケースがあります。これを特定支出控除といいます。
現行の特定支出控除は、1.通勤費 2.転勤に伴う転居費用 3.職務上必要な研修費 4.職務上必要な資格の取得費用(弁護士や税理士など一定の資格取得費用は除く) 5.単身赴任者の帰宅旅費の5つの支出のみが該当し、これら5つの特定支出の合計額が給与所得控除額を超える場合に、給与等の支払者の証明があればその超えた部分を給与収入からさらに差し引いて所得税の計算がされることになります。
しかし、特定支出控除額が給与所得控除額を超えるケースはほとんどなく、年間の適用者数は平均6名~10名程度とごく僅かな人数であるため、制度が形骸化しているとの指摘もありました。
そこで、適用対象者の範囲がもう少し広がるように見直されることとなりました。特にアルバイトをしながら資格取得を目指されている方は、もしかしたら該当することがあるかもしれませんね。
(1) 特定支出控除額の増加
<改正前>
特定支出合計額から給与所得控除額を差し引いた金額
<改正後>
①給与収入が1,500万円以下の場合
特定支出合計額から給与所得控除額の2分の1に相当する金額を差し引いた金額
②給与収入が1,500万円超の場合
特定支出合計額から125万円を差し引いた金額
(2) 特定支出控除の対象範囲拡大
上記の5つに加えて、次の支出も認められるようになりました。
①弁護士や税理士など職務の遂行に直接必要な資格取得費
②書籍代、衣服代、接待交際費などの支出(年間65万円までとする)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして、給与の支払者より証明がされたもの
お問い合わせ先:0120‐944‐733
事業財産承継部 浅原
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