従業員などに快適に働いてもらうための福利厚生の代表的なものに社宅があります。しかし、従業員を無料で住まわせると、家賃分が給与として課税されてしまいます。給与課税されないための家賃設定とはどれくらいなのでしょうか。
ある会社の社長、Aさんが相談にいらっしゃいました。
Aさん)うちの会社もアベノミクスで儲かってきたから、いままで出来ていなかった福利厚生に力を入れようと思って
いるんだ。それで、社宅アパートを借り上げようと思う。従業員を無料で社宅に住まわせてあげれば、みんな
幸せで、仕事の能率も上がると思うよ。
秋子)社長の考えは立派で、経営者の鏡ですね。でもちょっと待ってください。従業員に無料で社宅を貸すのはお
勧めできません。
Aさん)なぜだね。ただで借りられれば、従業員は家賃負担から開放されて大喜びじゃないかね。
秋子)そうでもないのです。従業員が無償で社宅を借りた場合、家賃に相当する金額は給与として課税されてしま
うのです。
Aさん)そうなのか。じゃあ、一体いくらで貸せばよいのだね。
秋子)会社が従業員から受けとれば給与課税にならない一定額の家賃、これを賃貸料相当額といいますが、これ
は、次の3つの算式の合計額で計算します。
① (その年度の建物の固定資産税の課税標準)×0.2%
② 12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡)
③ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
もし、会社が従業員に無償で社宅を提供した場合、この金額が従業員の給与として課税されてしまいます。
Aさん)では、その金額を家賃とすれば給与にはならないんだね。
秋子)そうです。また、賃貸料相当額よりも安い家賃で貸した場合、課税される部分は受け取る家賃と賃貸料相当
額の差額部分になります。もし、賃貸料相当額が5万円であったとして、無償で提供すれば5万円が給与課
税になりますし、1万円の家賃をとれば、5万円との差額の4万円が給与課税されます。ところが、賃貸料相
当額の50%の家賃を受け取れば、賃貸料相当額との差額は課税されないこととなっています。つまり、賃貸
料相当額の50%の家賃設定であれば給与として課税されません。今回の例であれば、2万5千円と言うこ
とになります。
Aさん)うーん、話は分かったが、その賃貸料相当額の計算というのが難しそうだな。固定資産税の課税標準とい
うのはどうやって調べればいいの?
秋子)固定資産税の課税標準は、固定資産税の納税通知書と一緒に送られてくる固定資産税課税明細書に記載
されています。
Aさん)じゃあ、アパートやマンションを社宅として借り上げた場合はどうやったら分かるのかな。
秋子)都税事務所や市役所に行けば、自らが賃借している物件については固定資産税課税台帳の閲覧が出来ま
す。
Aさん)面倒くさそうだね。
秋子)賃貸料相当額は一般的には、月額家賃の6~8%程度といわれていますので、参考にしてみてください。
でも実際に社宅制度をつくるときは、税理士に相談してきちんと計算してくださいね。
従業員にとって住宅手当であれば給与として課税されますが、手当てとしてではなく、一定の家賃負担をしたう
えで、社宅として受け取れば住宅手当相当額を所得税の負担なく受けることができます。
また、経営者の方が社宅制度を使うことで合理的な節税策となりうることもあります。
また、役員への社宅の供与については、使用人とは少し違う考え方がありますので、また別の回でご説明いたします。
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