事業承継を行っていくうえで、現社長から次期後継者に株式を徐々に移転していくことになると思われますが、業績の良い会社様は往々にして株価が高い水準で高止まりする傾向にあり、贈与税負担が重くのしかかってきます。
そこで、株価対策の一環として現社長に役員退職慰労金を支給し、法人税の課税所得を大幅に圧縮させて株価を下げ、その下がった株価をもって、次期後継者に株式を生前贈与するといったスキームは一般的によく見られます。
しかし、創業者社長は、退職後も会社経営に口を出さずにはいられない、退職後も毎日会社に出社する、社長室が会長室に変わっただけで立派な個室がある等々、形式的には退職してもその実態は実は退職前と全く変わっていないという状況が散見されます。
ここで、役員退職慰労金が法人税法上の損金になる要件として、当該役員退職慰労金の支給を受けた役員が「まさに退職した」という客観的な事実が必要となってきます。つまり、退職したという事実認定がなされないと役員退職慰労金は、役員に対する一時的な報酬、つまり役員賞与となり全額が損金不算入となってしまう為、退職したという事実が客観的に見て判断できるような状況を整備しておく必要があります。ここでは「退職の事実」に必要と考えられる要件をご説明させて頂きます。
① 分掌変更の法形式の具備
代表権の喪失を決議した取締役会の議事録作成、役員退職慰労金支給額を決議した株主総会議事録及び取締役会議事録を作成し、保存が必要となります。
② 経営権の喪失
法律上の代表権を有しなくなるとともに、実質的にもその法人の経営権を有していないことが役員退職慰労金を損金算入する為の要件となっております。つまり、代表権喪失後も会社の重要な意思決定機関に参加し、重要な影響力を持つ場合などは経営権を喪失したとは言えません。
③ 実質的に退職したと同様の事情の形式面と実質面について
報酬が単に50%以上減少したという形式面のみならず、実質的に経営権を喪失したことが客観的に認知できるような状況証拠を固めておくことが肝要と思われます。
つまり、役員退任後、会社の意思決定について会長から社長へ委譲された権限などを説明できるようにしておくことが重要となります。
④ 役員給与の50%以上カット
同族会社において形式的に役員給与を50%以上カットしていても、引続き重要な意思決定に参画しているような場合は役員退職慰労金として取り扱うことを否認されたケースもあります。
したがって、形式要件のみ整備していても、実体が伴わなければ役員退職慰労金が全額損金不算入となるだけでなく、その役員に対する一時金として扱われる為、退職所得の課税上の恩恵を受けることなく給与所得として本人自身も修正申告と、まさに「踏んだりけったり」となりますので、株価対策の一環として役員退職慰労金の支給をご検討されている会社様は、顧問税理士にご相談されるだけでなく、セカンドオピニオンの意見を求めらることをお勧めいたします。
弊社では、現在の顧問税理士先生との関係を維持しつつ、セカンドオピニオンとしての立場でご相談を承らせて頂いておりますので、お気軽にご相談頂ければと存じます。
問合せ先:0120-944-733
事業財産承継部 清水
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