平成18年中に自社株贈与しませんか?
~株価が安いうちに贈与しませんか?~
会社によっては、今年中に自社株を承継したほうがいいケースがあります。タイミングを逃さないために、そのポイントと実行方法を確認しましょう。
1.決算前後で株価は変わる
自社株の承継の方法は、譲渡のほかに生前贈与、相続、遺言といったものが考えられます。生前贈与の場合、株価の低いときに贈与したほうが当然贈与税は低くなります。自社株の株価は、決算期の前後で異なります。株価評価を行い、年内に贈与を行ったほうが株価が低いと判断されれば、今年中に生前贈与を行いましょう。
自社株を贈与する時期が決算期の前か後で株価が異なってきます。なぜなら、株を贈与した日の直前期末の配当金、利益金額、純資産価額を元に計算するからです。
ここで、3月決算の会社を例にとってみましょう。A期を平成18年4月1日~12月31日、B期を平成19年1月1日~平成19年3月31日、C期を平成19年4月1日~12月31日、D期を平成20年1月1日~3月31日とします。
このC期の会計期間に株式を贈与した場合B期の会計期間の利益金額等が株価に反映されますが、B期の会計期間に株式を贈与すると、B期の会計期間の利益金額等が株価に反映されません。B期の会計期間の利益金額等を株価に反映させたい場合、つまりB期の会計期間の利益金額等が比較的低い場合は、決算期の後に贈与したほうが贈与税が低くなります。
自社株を贈与するのが今年か来年かでは類似業種の株価が変わります。12月末までに贈与すれば平成17年の類似業種の株価の平均が自社株の評価に反映されます。平成19年に贈与すると平成17年の類似業種の株価の平均が自社株の評価に反映されません。平成17年の類似業種の株価が低ければ、年内中に株式を贈与したほうが贈与税が低くなります。
2.自社株の生前贈与
株式の贈与を行うと、当然のことながら贈与税が課税されます。株価の高い段階で、後継者に一括で贈与を行ってしまうと、多額の贈与税が発生し、納税資金の問題が発生しかねません。よって、生前贈与を行う際には、対策を講じ、株価を下げた段階で計画的に行う必要があります。
(1)配当還元方式の活用
同族株主に対する贈与でも、配当還元方式が適用される場合があります。配当還元方式は、原則的評価方式に比べ、評価額が低くなる場合が大半です。同族株主グループへ贈与だからといって原則的評価とは限りませんので、適用できるものがいないかチェックしてみましょう。次の全ての要件を持たすものだけが、配当還元方式を適用できます。
① 受贈者の取得後の持株割合が5%未満であること
② 中心的同族株主(※)がいること
③ 受贈者が中心的同族株主でないこと
④ 受贈者がその会社の役員でないこと
※ 中心的同族株主:受贈者・直系血族・兄弟姉妹・一親等の姻族で全体の株式の25%以上を所有するもの
(2)生前贈与のポイント
① 基礎控除額110万円枠の活用
贈与をする年度、贈与をする人を分散することにより、基礎控除枠をうまく利用
します。
② 株式の分散を避ける
節税のため、株式を分散して贈与しても、支配権や将来の買取等の問題が発生します。よって、過度の分散を避け、後継者に贈与します。
③ 相続税の実行税率以下で贈与
将来の相続税負担率と比較して、それ以下の水準で贈与します。
④ 相続時精算課税制度での贈与
業績の良い会社で、今後、利益が出続けることが予想される自社株は、業
績が伸びるにつれて自社株の評価額も上昇します。そこで、株価が低いときに、または自社株対策で株価を引き下げたときにこの制度を利用して贈与すれば、2,500万円以内であれば贈与時には税金が課されません。
また、2,500万円超の場合でも、20%の暫定税率で贈与することができるため、今後の値上がりを考慮すると有利となります。
相続時精算課税制度を利用して自社株を後継者に贈与することにより、保有株式数を引き下げることができ、また遺産分割争いを事前に防ぎ、事業承継を円滑に行うことが可能になります。
(3)株価が低いうちに贈与をしよう ~今年中の贈与のススメ
現在、非上場会社の株価計算式に用いる「類似業種の株価」が急騰しています。今年中の贈与なら株価上昇前の平成17年の平均株価を採用することができます。
自社株の評価方法を再度まとめると、次のとおりになります。
①大会社 類似業種比準価額または純資産価額
②中会社 類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L)
Lの割合は評価会社の純資産価額等に応じて0.9、0.75、0.6
③小会社 純資産価額または(類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5)
この類似業種比準価額とは、その会社と類似する上場会社の株価をもとに3つの比準割合を乗じて計算する方法です。類似業種の株価は国税庁より公表されています。
類似業種の株価が上がれば自社株の価額は高くなります。そしてこの類似業種の株価が平成18年は、上昇傾向にあります。今年中の贈与であれば、平成18年より低い平成17年の平均株価を採用することができ、贈与税の負担も軽くなります。
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