厚生労働省は、10月30日、平成22年度厚生労働省税制改正要望事項を発表しました。
その中でも、地域医療の再生へ向けて、以下のような要望をまとめています。
(1) 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の創設〔相続税、贈与税〕
持分のある医療法人において、出資者の死亡に伴う相続税のために、相続人が出資持分の払戻しを請求する等により、医業の継続に支障を来すことのないよう、持分のある医療法人のうち、持分のない医療法人への移行を検討するものについて、以下の特例措置を創設します。
(i) 出資者の死亡に伴い相続人に発生する相続税の納税を3年間猶予するとともに、3年以内に一定の要件を満たす持分のない医療法人に移行した場合に、猶予税額を免除します。
(ii) 相続人や出資者が出資払込額の払戻しを受けた場合等に残存出資者に発生するみなし贈与の課税を3年間猶予するとともに、3年以内に一定の要件を満たす持分のない医療法人に移行した場合に、猶予税額を免除します。
(2) 周産期医療の連携体制を担う医療機関が取得する分娩施設に係る特例措置の延長〔不動産取得税〕
周産期医療の連携体制を担う医療機関が分娩の用に供する不動産を取得した場合に、当該不動産の価格の2分の1に相当する額を価格から控除する不動産取得税の課税標準の特例措置について、その適用期限を2年間延長します。
(3) 情報基盤強化税制の適用期限の延長及び拡充〔所得税、法人税、法人住民税〕
医療機関等が、レセプト電算処理やレセプトのオンライン請求の実施のためのソフトウェア、ハードウェアを取得した場合に、税額控除又は特別償却を認める特例措置(情報基盤強化税制)について、対象設備の追加等を行った上で、適用期限を2年間延長します。
(4) 中小企業投資促進税制の適用期限の延長〔所得税、法人税、法人住民税〕
医業、医薬品・医療機器産業、生活衛生関係営業等を行う中小企業者等が、一定規模以上の機械装置、普通貨物自動車等を取得した場合に、その取得価額の7%の税額控除又は30%の特別償却を認める特例措置(中小企業投資促進税制)について、その適用期限を2年間延長します。
(5) 病院等の耐震改修促進税制の延長〔所得税、法人税〕
病院等の事業用建物の耐震改修工事について、当該工事に要した費用の10%の特別償却を認める特例措置の適用期限を2年間延長します。
(6) 病院等が取得した地震防災対策用資産に係る特例措置の延長及び拡充〔所得税、法人税、固定資産税〕
病院等が地震防災対策用資産を取得した場合に、取得価額の20%の特別償却を認める特例措置について、対象地域を全国に拡充します(現在は東海地震に係る地震防災対策強化地域等に限られています。)。
また、病院等が取得した地震防災対策用資産について、当該資産に係る固定資産税の課税標準を3年間に限り3分の2に軽減する特例措置について、対象地域を全国に拡充した上で、適用期限を2年間延長します。
(7) 独立行政法人地域医療機能推進機構の設立に伴う社会保険病院等に必要な非課税措置の創設等〔所得税、法人税、登録免許税、印紙税、法人住民税、事業税、不動産取得税、固定資産税等〕
社会保険病院等を保有している独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)の存続期限後においても、引き続き地域医療の確保を図ることができるよう、新たな受皿となる独立行政法人地域医療機能推進機構の設立に伴う、税制上の所要の措置を講じます。
(8) 社会保険診療報酬に係る非課税措置の存続〔事業税〕
医療とりわけ社会保険診療の高い公共性に鑑み、社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置を存続します。
(9) 医療法人の社会保険診療以外部分に係る軽減措置の存続〔事業税〕
医療事業の安定性・継続性を高め、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保に資する医療法人制度を支援するため、医療法人の社会保険診療以外の部分に係る事業税の軽減措置を存続します。
(10) 社会保険診療報酬等に係る消費税のあり方の検討〔消費税〕
社会保険診療報酬は国民に必要な医療を提供する高度の公共性を有していることから消費税は非課税とされ、医療機関や保険薬局の仕入れに係る消費税については社会保険診療報酬において措置されているところであるが、今後、消費税を含む税体系の見直しが行われる場合には、社会保険診療報酬等に係る消費税に関する仕組みや負担を含め、そのあり方について速やかに検討します。
(11) 特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(タックスヘイブン税制)〔法人税、法人住民税、事業税〕
タックスヘイブン税制について、必要な見直しを行います。
(12) 国外関連者との取引に係る課税の特例(移転価格税制)〔法人税、法人住民税、事業税〕
移転価格税制について、必要な見直しを行います。
《解説》
最も気になる税制改正要望事項は、(1)医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の創設〔相続税、贈与税〕です。
この要望が可決すれば、現在、税負担の懸念から持分ありから持分なしへ移行したくても移行できない医療法人にとって、スムーズに持分のない医療法人へ移行が可能となるのではないかと思います。
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