『致知』最新7月号では、震災を通じて見えてきた日本人の素晴らしい徳性について、中條高徳氏が綴られています。
時の政府中枢から「暴力装置」とまで言われた自衛隊10万余の大活躍はすべての国民の胸を打った。
石巻などでは腰まで泥水に浸かって黙々と避難者を救い出し、遺体を収容し、食事は乾パンと缶詰、
風呂もなかなか入れず、寒風に野宿という過酷な状況下で活動をする勇士たちに、全国民から感動と感謝の渦が巻き起こった。
南三陸町では、防災担当の遠藤未希さんが町民に津波の襲来を告げ続けながら、我が身は波にさらわれ散ってしまった。
昨夏結婚し、秋には披露宴を行うため花嫁衣装なども整えていたという。
壊滅的な被害を受けた岩手県大槌町でも、住民の避難誘導中に半鐘(はんしょう)を打ち続け、
あるいは水門を閉めに向かった消防隊員ら11人も犠牲になった。
危険は感じつつも「公」のため「義」のため、多くの方々が役割に敢然と殉じた。
石巻市の渡波小学校では1か月遅れの卒業式が行われた。
人気者のK君がいない。迎えに来た家族と帰宅して波にさらわれた。
K君の親友は悩んだ末、黄色のポロシャツで式に出た。亡くなったK君や制服のない生徒のことを思い、制服での出席を断念したという。
悲劇の大きさは、こんな子供にも惻隠(そくいん)の情をもたらしたのだ。
元キャンディーズで女優の田中好子さんががんと闘い、命絶えんとする時、肉声で、
「被災された皆様のことを思うと心が破裂するように痛み、ただただ亡くなられた方々のご冥福をお祈りするばかりです」
「必ず天国で被災された方のお役に立ちたいと思います」
と息も絶え絶えに語ってこの世を去った。
このような我が民族の自制心を忘れず、しかも事にあたり我が身を顧みない勇気、そして強いコミュニティ精神などに対して、外電は世界各国の賛辞を次々と報じている。
この大きな災難がその生き様の誇りを気づかせてくれたのだ。
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