妹さくらの一人息子の満男は成長するにつれて、青春時代の「常」として、「人生」についていろいろ悩むが、そんな時、いつも「相談」するのはなんとなく尊敬している寅さんである。
寅さんをなんとなく尊敬している満男の感性は素晴らしい。
ある時、満男は寅さんに「人間はなんのために生きてんのかなあ」という、「哲学」の根源のような難しい質問をする。
その難しい質問に対する寅さんの答えは圧巻である。
「難しいことを聞くなあ、お前は。
…なんというかな、
あ~生まれてきてよかった
…そうおもうことが何べんかあるだろう。
そのために生きてんじゃねえか」
あるとき、寅次郎は長崎・五島列島でひょんなきっかけで、カトリックのおばあさんの最後を看取ったことから墓地で墓穴堀をすることになる。
汗をかき、ぐったりし、海を眺める寅さんは近所のおばさんが差し入れてくれた握り飯を食べる。
一緒に穴を掘った男が、「うめえなあ~」と唸(うな)と、寅さんは
「ああ、働いた後だからな。
労働者っていうのは、毎日うまいメシを食ってるのかも知れねえなあ、おい」
と晴れ晴れとして、実に幸せそうな顔でいう。
そんなささいな時にでも、人間は「生きていてよかったな」と思えるものである。
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