からきし弱いアメリカンフットボールの大学チームがありました。
その弱さは特筆もので、同じ大学リーグの強豪チームと戦うときは、100対0でも誰も不思議がらないほどでした。
そのチームを指導することになった新任監督は、「何とか強くしてやろう」とひとつの指導法を取り入れたのです。
数年後、その大学は何と「大学日本一」の栄冠を手に入れました。
いったい、監督はどんな方法を取り入れたのでしょうか。
それは一年生部員を「神様扱い」することでした。
体育会系では先輩後輩の序列が厳しく、1年生は雑用係をさせられます。
ところが監督は、2年以上の部員に、1年生を神様として扱うことを命じたのです。
具体的にはどんなことをしたのでしょうか。
まず雑用はすべて4年生が引き受けた。
次に練習ではホメてホメてホメまくった。
その結果、1年生はめきめきと実力をつけ、数年後には強豪チームに変身してしまったのです。
これは実際にあった出来事です。
急に強くなったのは京都大学のチームです。
当時、学生アメフト界では、西の関西学院大学、東の日本大学といわれていました。
ところが、この時期の京都大学は、たった一人の常識破りの監督(水野弥一氏)によって、本当に日本一になっています。
これはいった何なのか。
「一人の人間の中には無限の可能性が眠っている」とよく言いますが、眠っているその可能性を、1年生を神様扱いするという方法によって、遺伝子的に目覚めさせたのです。
この方法はけっして独創的なものではありません。
むしろ、古典的と言ってもいいくらいです。
心理学の興味深い実験があります。
心理学の研究チームがある学校へ出かけ、そこでいきなり知能テストを実施し、成績が突出して優秀だった生徒数名の名前を発表して帰ってきました。
半年後に、名指しされた生徒の成績の変化を調べると、生徒の成績は例外なくグンと伸びていました。
しかし、この実験には大きなカラクリがあり、知能テストで優秀だと名指しされた生徒は、成績とは関係なく、実はランダムに選んだものだったのです。
にもかかわらず、成績が伸びたのは、周囲の期待や自分が得た自信によって、勉強に関係する遺伝子がオンになったと考えられます。
これを「ピグマリオン効果」と言います。
自分が作った女人像に恋をしてしまったピグマリオンが一心に祈ったら、彫像が本物の女性になって現われたという故事にちなんで、期待に沿うような効果の現われることをピグマリオン効果と呼んでいます。
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