彼は片田舎の丸太小屋で生まれた。
学校は貧しさのために断続せざるを得なかった。
彼が正規の教育を受けたのは、合計しても一年に満たない。
二十代になって事業を起こす。
だが、失敗した。
その上、恋人の死という悲運に見舞われ、自身は神経衰弱を患う。
その中でも彼は独学し続けた。
そして二十七歳の時、弁護士の資格を取得する。
労働に明け暮れた経験。弁護士活動で得た見聞。
それが止みがたい夢と激しい志を育み、彼を政治へ駆り立てた。
だが、なだらかな道ではなかった。
三十代では下院議員選挙に二度、四十代でも上院議員選挙に二度落選した。
四十七歳の時、副大統領選に立候補したが、これも落選した。
しかし、彼は逃げなかった。
夢と志が逃げることを許さなかった。
そして大統領の座を射止めたのは五十一歳の時だった。
南北戦争を戦い抜き、奴隷解放という新しい歴史を切り開いた。
彼の名はアメリカ第十六代大統領エイブラハム・リンカーンである。
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