最初に見たように、「組織が成果を上げるための道具や機能、機関」がマネジメントの定義です。そして、実際に成果を上げようとすると、マーケテイングやイノベーションを駆使する必要があります。さらに、生産性を上げる、つまり、より高い成果を上げるには、上記で見た諸要素についても適切に管理しなければなりません。このように、一口に「組織の成果を上げるマネジメント」といっても、その適用範囲は非常に広いのです。
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最初に見たように、「組織が成果を上げるための道具や機能、機関」がマネジメントの定義です。そして、実際に成果を上げようとすると、マーケテイングやイノベーションを駆使する必要があります。さらに、生産性を上げる、つまり、より高い成果を上げるには、上記で見た諸要素についても適切に管理しなければなりません。このように、一口に「組織の成果を上げるマネジメント」といっても、その適用範囲は非常に広いのです。
企業は、顧客のニーズを満足させるために、資源を活用して製品やサービスなどを創造します。成果を上げるためには、資源の生産的な活用が企業にとって重要になります。
企業の管理的機能
資源の生産的な活用を管理することも、マネジメントの重要な役割の1つです。いわば、 企業の危機管理能力がこの生産性の向上だといえるでしょう。
会計学や経済学では、生産性の要因として、労働、資本、原材料を掲げています。一方ドラッカーは、これらに加えて、次の6点を挙げています。すなわち、①知識、中でも知識労働者、②人間にとって最も消滅しやすい時間、③同一の資源を使ってできる製品の組み合わせのバランス(プロダクト・ミックス)、④工程の組み合わせ(プロセス・ミックス)、⑤自らの強み、⑥組織活動の適切さおよび活動問のバランス、これらの6点がそれです。
顧客を創造するために
前回のお話で企業の目的が顧客の創造だということがわかりました。マネジメントは、この顧客の創造を促す機関として機能しなければなりません。
では、具体的にどのような機能が求められるのでしょうか。
ノベーションとマーケテイング
企業の唯一の目的である「顧客の創造」を満足させるために、企業はマーケテイングとイノベーション、この2つの機能だけを持つとドラッカーは断言します。
顧客の創造とは、すなわち顧客のニーズを満足させることにほかなりません。-方、マーケティングとは、「顧客は何を買いたい別を明らかにし、それを提供する活動です。したがって、企業の唯一の目的である顧客創造には、マーケテイングが不可欠になるわけです。
絶え間のない革新が不可欠
一方、顧客の創造には、顕在的なニーズに対応するだけでなく、自ら顧客の新しい満足を創り出していくことも不可欠になります。これがイノベーション(革新)です。そして、マーケテイングとイノベーションを効果的に機能させること、すなわち「顕在化している欲求に対して手段を提供し、潜在的な欲求を有効需要に変える」ことが、マネジメントに求められるのです。
イノベーションは発明ではない
ドラッカーはイノベーションを「人的資源や物質資源に対し、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすこと」と定義します。したがって、イノベーションは技術的な発明と同義ではありません。例えば、冷蔵庫に凍結を防ぐ用途を見出し、これを極寒に住む人々に販売することも、イノベーションの1つに数えられるわけです。
マネジメントは組織に成果を上げさせるために存在します。では、組織としての企業を考えた場合、企業はいったいどのような成果を上げるべきなのでしょうか。
この問いに対してドラッカーは、少々意外な回答を提示します。
「顧客の創造」こそが、企業が上げるべき成果、すなわち企業の目的だと、ドラッカーは位置付けるのです。ドラッカーの意図するところについては、少々解説が必要でしょう。
唯一の目的は顧客の創造
企業は社会的機関の一員です。そのため、社会やコミュニティ、顧客のニーズを満足させるために存在します。ということは、ニーズを満足させるに足らぬ企業は、存在意義がなくなります(仮にニーズを満足させられないとすると、政府や自治体も同様!)。
この考えからすると、誰かしらのニーズを満足させ続けることが、企業の目的となります。言い換えると、企業の目的は「顧客を創造する」ことになります。しかもこれが企業の目的についての妥当な唯一の定義だと、ドラッカーは強調するのです。
したがって、企業にとってのマネジメントとは、「唯一の目的である顧客創造を達成するための道具、機能、機関」になるわけです。
組織体が機能し、特定の成果を上げて社会に貢献するために、マネジメントは3つの課題に取り組まなければならないといわれます。
課題①:組織に特有の目的と使命を知る
社会の機関として存在する組織は特有の目的と使命を有します。この目的と使命の理解なくして、それに見合った成果を上げることは不可能です。したがって、組織に特有の目的と使命を知ることが、マネジメントにとっての最初の課題になります。
課題②:仕事の生産性を上げて、働く人を生かす
成果を上げるためには、目的と使命を理解した上で、仕事の生産性を上げなければなりません。さらに、働く人々に達成感を与えることが不可欠になります。これがマネジメントの第2の課題です。
課題③:社会的責任を全うする
組織の活動は社会に何らかの影響を及ぼします。中には予期せぬ悪影響を及ぼすこともあるでしょう。こうした問題に対しても適切に対処するのがマネジメントの課題になります。
3つの課題プラスα
これが「マネジメントの3つの課題」と位置付けられていますが、プラスαとして現在と未来を考える(時間の次元)、すでに存在するものを管理・改善すること(管理改善の次元)にも配慮することが重要です。