普段コンサルティングの現場で思うことのひとつに、「どんなにメイン商品であてっても、採算があっていないのなら、即刻やめてほしい」がある。
とはいうものの、撤退したら携わっている人は解雇しなくてはならないし、売上が下がれば、銀行には成長性なしと見られるという恐怖もある。
そして、一番の問題点は、何の商品で利益が得られているのか、はっきり言って分からない、ということにある。
「全体で見ると、確かに儲かっていない」「なんとなくやっていて、結果として赤字」そんな景色が広がっている。
ここに1つある商品の売上があったときに、費用として、を割り当てればよいのか?
・商品原価
・販促費
・人件費
・家賃
・水道光熱費
・消耗品費
水道光熱費や消耗品費などは、ひと塊にして売上額に応じて賦課(按分)してもよいが、売上原価、販促費、人件費、家賃などは、どの売上を上げるためにかかった費用なのか、しっかりと紐づける必要がある。
まずは膨大な社内データをひっくり返し、この作業をやらないことには始まらない。
さて、それが終わると、 商品別利益が明確になる。このあたりで、経営者は採算が合わない商品を、やめるのか続投するのかやっと判断できることになる。
続投ということになれば、各営業マンには、自分が扱っている商品別利益をまずはトントンにするという目標を与えることになるわけである。(もちろん、エンドを決めて、それまでに黒字転換しなければ撤退だ)
ここで、とても参考になる記事を見つけた。こちらのブログである。
http://www.ymmlaw.jp/cgi-bin/wp/?p=460
ご本人は弁護士先生ということだが、この着眼点を持たれて、日々業務に当たっていただけているとしたら、これほど心強い弁護士さんはいらっしゃらないと思う。
このなかで引用されている記事をこちらにも掲載させていただこう。
ローランド・ベルガー社のパートナーの平井孝志さんがThink!というビジネス雑誌で執筆された記事
販売部門、営業部門に、売上目標を立てるのは愚策である。販売部門や営業部門は、利益を出すための部署であり、利益が出せないのであれば、どんなに売上があっても、営業としては駄目である。営業部門の一人一人に利益目標を与えると、安易な値下げが最も良くないことが営業の現場の人間でもわかるようになる。
一方、生産部門、開発部門が、費用削減を目標にするのも愚策である。そのような目標を立てると、イノベーションが起きなくなる。そして、それどころか、食品の場合、混ぜ物をして、原価を下げようとする。なぜなら、材料費をより下げるしようとする方向に努力が向かうからである。多くの偽装事件が食品業界に生じているのは、食品メーカーの生産部門、開発部門が費用削減を目標にしているからではないか。原価を下げようとすると、混ぜ物、水増し、産地偽装、消費期限切れ商品の再利用が生じる。開発部門は費用を削減して利益確保を目指すのではなく、売れる商品をつくることに専念すべきである。営業部門が「こんな商品売れないよ」と言ったら、開発部門は、素直にそれを認めるべき。「物が売れないのは営業のせい」ではない。これからの時代は、商品が人に与える価値で勝負が決まる。開発が目指すべきは、原価削減による利益確保ではなく、魅力的な商品による売上向上である。
昔のような「作れば売れる」時代は終わった。物の時代から人の時代になったのだから、人を中心に考えなければ駄目だ。その違いは、あたかも、メーカーが作った物(地球)の周りを消費者(太陽)が回っていた天動説の時代から、コペルニクス的転回が起き、消費者(太陽)の周りで物(地球)が回り、生活を育む地動説の時代に移ったようなものである。
前世紀の日本企業は、営業部門に売上目標を、開発部門に利益目標を立てている会社が多かったのではないだろうか。今世紀はそのような目標設定では駄目だ。営業は利益を、開発は売上を目指すべきなのである。
利益志向が”かけ声”だけになっている企業は参考にされてはいかだだろうか。
もちろん、事前に売上と費用の紐づけをせずして、これに取り組むことは許されないが。
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