本日は「理念と経営」9月号の企業事例研究で取り上げられている、「俵屋旅館」について述べさせていただきたいと思います。
俵屋は300年以上続く京都の老舗旅館です。部屋の窓から坪庭を眺めているだけで、静寂に包まれ、さりげないもてなしの気配りと、落ち着いた部屋の調度が、なにか懐かしい気分にさせてくれる宿。写真を見るだけで、こんな旅館で1日を過ごせたら、心休まるだろうなと感じます。
「居心地のいい場所と古い日本文化を買っていただくことが俵屋の務め」
「利潤を”度外視”したときに初めて利潤が得られる」
そう語るのは代表取締役の代表取締役の佐藤年さんです。
佐藤社長のお話を聞いていると、本当にいいものを追求したい、そしてそれをお客様に提供するのが当社のサービスだ、という強い意志が中心にあるような気がします。
いいものを追求するというのは、お金も時間もかかることです。これが利潤の”度外視”と結びつくのではないでしょうか。そして、この一時的に利益を”度外視”して、いいものを追求する行為がおもてなしの心となって、今度はお客様から利潤を運んでくれるのではないでしょうか。
私は追求という言葉を使いましたが、研究と置き換えてもいいかもしれません。務めであると言う、居心地のよさや日本文化に対する研究心が俵屋旅館の経営力の源泉に思えてくるのです。
代々の当主に想いを馳せ、初代は「商いよりも何よりも世話好きだったんだと思う」、五代目も「商売よりは国学に造詣が深かった」と言っています。
いいものというのは和でも洋でも収まるべき場所に収まればそれは洋の東西を問わないというのが、社長の考えのようです。それだけに竹の柱を一本入れるか入れないかで、えんえんと議論をすることがあったとか。
佐藤社長は「もし、いまうちが何か価値があるようにいわれるとしたら、それは多分、時代がそうさせたんだと思います」そう語っています。
この謙虚な姿勢も見習いたいものですね。
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