社員が退職の申出と同時に退職日までの有給休暇を申請した場合、
業務の引継ぎができず非常に困ったことになります。このような場合、
社員に対して退職日の変更や有給の日数を減らすように要請すること
になりますが、社員がこういった要請を拒否した場合に会社側は
どのように対処すればよいでしょう?
◆会社側は一方的に退職日を変更できない
就業規則で、「1ヶ月前までに退職の申出をしなければならない」とい
った規定を設けている企業は多いと思います。しかし、民法(627条)
では期間の定めのない雇用契約における自己都合退職に関しては、
2週間前までに退職の申出をすれば退職の効力が生じると規定して
います。月給者についてはその月の前半(給与計算期間を1日~末日
までとした場合なら15日まで)に退職の申出をしたのであればその月の
末日で雇用契約は終了します(16日以降に退職の申出をした場合は
翌月の末日に退職が成立します)。
会社側は一方的にこの規定に反した退職日を設定することはできま
せん。従って、2週間前までに退職の申出をした社員が、その退職日
までの期間に該当する有給休暇を申請した場合、会社側はその有給を
拒否することができなくなってしまうのです。
◆退職者の有給休暇の申請に対し時季変更権は行使できるか?
使用者側は、「事業の正常な運営を妨げるような場合」には申請された
有給休暇を別の日に変更することができます。これを時季変更権と言い
ます(労基法39条4項)。
しかしながら、退職者には「別の日」がないため時季変更権は行使
できず、有給を与えざるを得ません。
◆◇対処法◆◇
実際にこの様なケースが生じてしまった場合の対応としては、従業員を
説得して出社してもらい、業務を引き継いでから有給を取得してもらうか、
未消化の有給を買い取る条件で引継ぎをしてもらうかしかありません。
有給の買い取りは法律で禁止されていますが、退職によって有給の
権利が消滅してしまう場合には、社員の了承を得た上でなら買い取ること
が出来ます。
こういった事態を事前に避けるためには、「退職日までに業務の引継ぎを
しない場合には、退職金の全部または一部を支給しない」と就業規則で
定めるとか、有給休暇を計画的に付与すること(労基法39条5項)
などが考えられます。有給休暇を計画的に付与しておけば、退職の際に
長期間にわたる有給を取得される恐れは解消できます。
また、日ごろから社員に対して引継ぎの重要性を説明しておくことも
大切なことです。
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