平成19年12月14日に、自民党の税制改正大綱が固まりました。今回は、この中から医療機関に関連のある部分をご紹介します。
1.社会医療法人に関する法人税の取り扱い
社会医療法人について、次の措置を講ずる。
(1)納税義務及び課税所得の範囲
社会医療法人は、収益事業を営む場合に限り法人税の納税義務が生ずることとし、収益事業から生じた所得について法人税を課税する。なお、収益事業の範囲から、社会医療法人が行う医療保健業(附帯業務として行うものを除く。)を除外する。
(2)適用税率
各事業年度の所得の金額に対して22%の軽減税率を適用する。
(3)みなし寄附金の適用等
収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなす。なお、寄附金の損金算入限度額は、所得の金額の50%相当額(当該金額が年200万円に満たない場合には、年200万円)とする。
(4)課税所得の範囲の変更に伴う所要の調整
社会医療法人の認定を受けた場合には、法人の解散及び設立があったものとして取扱う。また、認定の取消しを受けた場合には、簿価純資産価額から利益積立金額を控除した金額を益金の額に算入する。
(5)社会医療法人を所得税法別表第一(公共法人等の表)及び消費税法別表第三に追加する。
解説
社会医療法人に関する税制が取りまとめられました。収益事業についてのみ課税をすることとし、その税率は一律22%という優遇措置が与えられます。公共法人等と同じ取り扱いとなります。通常の医療法人と比較してみると次のようになります。
経過措置型 医療法人 |
旧・特別医療法人 |
特定医療法人 |
社会医療法人 | |
課税 範囲 |
すべての所得 |
すべての所得 |
すべての所得 |
収益事業から生じた所得のみ |
税率 |
所得のうち800万円まで・・・22% 800万円を超える部分・・・30% ※出資金が1億円を超える場合は、一律30% |
所得のうち800万円まで・・・22% 800万円を超える部分・・・30% ※出資金が1億円を超える場合は、一律30% |
22% |
22% |
国税庁長官の承認を受けている特定医療法人よりも社会医療法人は課税範囲が狭いことから、税制面ではかなり優遇されることになります。このことから、社会医療法人は特定医療法人以上に厳しい要件となることが予想されます。また、収益事業を営んでいる旧・特別医療法人は社会医療法人の認定を受けないと収益事業を営めなくなってしまいます。特別医療法人の要件が特定医療法人の要件と類似していることから、社会医療法人の認定を受けられず、収益事業を取り止めざるを得ないケースも想定されます。いずれにせよ、今後の細かい要件がどのようになるかが最大の焦点となります。
②不動産取得税の優遇措置
周産期医療の連携体制を担う医療機関が取得する分娩の用に供する不動産に係る不動産取得税について、当該不動産の価格の2分の1に相当する額を価格から控除する課税標準の特例措置を2年間に限り講ずる。
解説
総合的な少子化対策を推進する一環として、働き方の改革によるワーク・ライフ・バランスの実現、包括的な次世代育成支援の制度的な枠組みの構築等を図るため、平成19年内を目途に策定する「子どもと家族を応援する日本」重点戦略を踏まえ、税制上の所要の措置として設けられた制度です。
③医療費控除の範囲拡大
医療費控除の対象範囲に、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく特定保健指導のうち一定の積極支援に係る費用の自己負担分を追加する。
解説
「医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム」に掲げられた目標の達成及び「新健康フロンティア戦略」に掲げられた指標の改善を図るため、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき医療保険者が平成20年度から行うメタボリックシンドロームに着目した健診・保健指導(特定健診・特定保健指導)に係る費用の自己負担分を、医療費控除の対象とする。
④中国残留邦人等に対する医療支援給付に関する取り扱い
・社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用対象となる範囲に含める。
・消費税を非課税とする。
・医療法人の事業税の課税標準の算定方法上特例措置を設ける。
解説
与党中国残留邦人支援に関するプロジェクトチームにおいてとりまとめられた中国残留邦人に対する新たな支援策を実施するに当たり、老齢基礎年金の満額支給を実現するための年金保険料相当の一時金及び生活保護とは別途の法律に基づく新たな生活支援のための給付金について、非課税とする等の措置を設けます。
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