めっきり寒くなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回のテーマは「海外子会社の給与負担金と社会保険料負担」です。
日本の親会社が、事情は様々ですが、海外に子会社を設立しその海外子会社に自社の社員を出向させ、その業務に従事させるケースがよく見られます。そんな時、一般的に日本より物価の低い国に子会社を設立するため、日本親会社が,その社員の日本で得られる給与水準を維持させるために出向者(従業員)に対する給与の較差補てんをすることになるのですが,税務上は,この較差補てん分を出向者の給与の一部を支払ったものとして損金に算入することができます。
一方,日本の親会社が海外子会社に出向させている社員の給与を肩代わりするケースも珍しくないようですが,この場合は本来海外子会社が負担すべき給与相当額について,親法人が子法人に対して経済的利益の供与を行ったものとして寄附金となる旨定められています( 法法37⑦ )。
ところで,海外子会社に出向した社員が日本の親会社に在籍したままである場合,その出向者は日本の健康保険や厚生年金保険に引き続き加入することが原則ですが,社会保険料の法人負担分について海外子会社から徴収せずに日本親会社が全額負担している場合,海外子会社で役務提供が行われているため,海外子会社が負担すべきものであるという根拠から寄附金と認定されるのではないか,との議論があります。
しかし,日本の親会社と海外子会社間の契約で日本の親会社が社会保険料の費用を負担することが取り決められているような場合には, 法基通9-2-47 注2で例示されているとおり、出向者に対していわゆる“留守宅手当”の一部を支給したものとして損金に算入することができるものと考えられます。
[参考]
法基通9-2-47 (出向者に対する給与の較差補てん)
出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補てんするため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む。)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。
(注) 出向元法人が出向者に対して支給する次の金額は、いずれも給与条件の較差を補てんするために支給したものとする。
1 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人が当該出向者に対して支給する賞与の額
2 出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額