今年の梅雨入りは、北陸・東北地方を除いて例年より10日前後早かったようですね。梅雨明けも早まるのでしょうか。
さて今回は電子計算機を賃貸借することについて定めた契約書について検討していきたいと思います。
電子計算機の賃貸借契約書
甲株式会社(以下「甲」という。)と乙株式会社(以下「乙」という。)は、Aメーカー製造の弊社所有の電子計算機(以下「機器」という。)の賃貸借に関し、次のとおり契約を締結する。 1. 機器名及び数量: 2. 使 用 期 間: 3.機器の賃借料: ( 省 略 ) 4. 機器の引渡完了予定日: 5. 機器の据付場所:
(契約の趣旨) 第1条 乙に対する機器の賃貸については、この契約条項によるものとする。 (中 略) (機器の保守) 第4条 甲は、機器が正常に作動するように、甲の負担において、機器の調整、修理、部品の交換等所要の保守を行う。なお、機器が 正常に作動しない場合は、甲は誠意を持って所要の保守を行うが、この場合の乙の損失に対しては、甲はその責めを負わないものとする。 2 甲は、前項の保守をメーカーに委託して行う。 3 機器の定期保守は、原則として、メーカーの通常の就業時間内に行う。ただし、シフト契約の場合については、別に定めるところ により行う。 4(1) 乙の申出により通常の保守基準を超えて行った保守の費用 (2) メーカーの通常の就業時間外に行った定期保守の費用 (3) 乙の故意または過失により生じた機器の調整、修理または部品の交換等に要する費用 (4) 第1項及び前各号の作業に当たり、必要とする用役費用 (以下、 略) |
課否判定
〔結論〕
印紙税法別表第一「課税物件表」に掲げる文書のいずれにも該当しませんので、課税文書には該当
しないことになります。
〔理由〕
1.まず、「課税文書」について簡単に復習しておきましょう。
① 課税文書
印紙税法別表第一に掲げられている「課税事項を証明する目的で作成されている文書」のうち、
「非課税文書」 に該当しない文書をいいます。
② 非課税文書
印紙税を課さないものとして、印紙税法第5条に規定されている文書をいいます。
・ 印紙税法別表第一の「非課税物件」の欄に掲げる文書
・ 国、地方公共団体その他特定の法人(印紙税法別表第二)の作成する文書
・ 法律(印紙税法別表第三)に定める特定の文書で、これに対応する特定の者が作成した課税文書
③ 不課税文書
印紙税法別表第一「課税物件表」に掲げられていない文書をいいます。
* 詳しくはH22年10月29日のブログをご参照ください。
2.この文書が「請負に関する契約書」に該当するか考えてみましょう。
この文書中に「保守を行います」という記載があるので、「請負契約」によるも
のとも考えられるのですが、これだけでは「請負契約」による保守を定めたもの
だとすることはできません。
この文書の第4条に規定されている「機器の保守」に関する事項は、民法第
606条第1項(賃貸人の修繕義務)に規定する賃貸人の修繕義務とその免責範
囲を定めたものであり、賃貸借契約において、当然に生じる保守についての定め
であると認められます。
民法第606条第1項(賃貸人の修繕等) 「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」 |
なお、賃貸人の修繕義務に当たらないようなものやその免責範囲を超えたもの、例えば賃貸人
の誤作動などによって生じた事故などに係る修繕や保守などを行い、一定の金銭の収受を約して
いるような場合には、「請負に関する契約書」に該当することもあります。
にこにこめんたいこ