前回、「第7号(継続的取引の基本となる契約書)」の該当要件についての解説の中で、「営業者間で締結される契約であること」という表現を用いました。また、第24~26回でご紹介した「第17号文書」についての解説の中でも、「『営業に関しない受取書』は非課税」というお話をいたしました。そもそも、この「営業」とは何なのでしょうか?
今回は、印紙税法の解釈の上で最も重要なポイントの1つとなる「営業」の考え方について解説いたします。
「営業」とは、利益を得る目的で同種の行為を継続的反復的になすことをいいます。営利目的がある限り、現実に利益を得ることができなかったとしても、また、当初に継続反復の意思がある限り、1回でやめたとしても営業に該当します。さらに、ここでいう「行為」とは、「商人」が行う「商行為」のことをいい、「商人」「商行為」それぞれの具体的な定義や内容は、商法の条文において規定されています。
まず「商人」とは、自己の名をもって「商行為」を行う者をいいます。そのほか店舗などの施設で物品の販売を行う者、鉱業を営む者も含まれることとされています。「商行為」は、主に商法の501~503条で列挙されています。以下、抜粋でご紹介します。
1.絶対的商行為(商法501条)・・・次に掲げる行為は、商行為とする。 ①転売して利益を得る目的での動産、不動産、有価証券の購入、及びその目的物の転売、 ②将来購入予定の動産・有価証券の売却、及びその先物契約の義務の履行のためにする目的物の購入、③取引所の取引、④手形その他の商業証券に関する行為 2.営業的商行為(商法502条)・・・次に掲げる行為を営業として(=継続・反復する意思で)するときは商行為とする。ただし専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為はこの限りでない。 ①他人に賃貸するための動産・不動産の購買・賃借、②製造又は加工、③電気又はガスの供給、④運送、⑤作業又は労務の請負、⑥出版、印刷又は撮影、⑦客の来集を目的とする場屋における取引(例:貸しホールなど)、⑧両替その他の銀行取引、⑨保険、⑩寄託の引受け、⑪仲介又は取次、⑫商行為の代理の引受け、⑬信託の引受け 3.附属的商行為(商法503条)・・商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。 |
これらの条文の解釈から、例えば個人の場合、個人商店などの経営者は営業者に該当しますが、第24回で触れたように、医師、弁護士、税理士などのいわゆる自由業は、上記に掲げられている「商行為」のいずれにも該当しないため、印紙税法の営業には該当しないことになるのです。農業、漁業等を行う者が、店舗を持たずにその生産物を販売する場合も、「商人」の定義の「店舗などの施設で~」に反することから、営業には該当しないことになります。また、サラリーマン、内職、大工などの職人、個人タクシーの運転手などの行為も、「専ら賃金を得る目的で(上記2、502条ただし書き)」あることから営業にはなりません。ただし、サラリーマンであっても、マンションを賃貸している場合などは、その行為は「利益を得る目的で同様の行為を反復継続」することになりますので、営業に該当します。法人については、株式会社などの営利法人は営業者に該当しますが、財団法人や学校法人などの公益法人は、もともと営利性を持たないという趣旨から、営業者に該当しません。
うじゅ☆