みなさん、こんにちは。すっかり秋の気配がしてまいりましたね。個人的には秋という季節は好きなのですが、季節の変わり目ですので健康面はもちろん、精神面でもバランスを崩しがちです。十分にご注意ください。
さて、前回はIFRSの基本的な考え方について書かせていただきましたが、今回は現行の日本基準と会計処理面でどのような点で相違するのかについて、大きな4つの違いについて述べたいと思います。
① 収益認識
日本基準では、売上高の計上は会計用語で「実現主義」と呼ばれる基準により行うことが決められています。具体的な売上の計上は、企業の実務の慣行、業種ごとのルールなどに基づいて行われているのですが、例えば物品の販売については、多くの企業で適用しているのが出荷基準、すなわち「顧客に商品を出荷した時点」で売上を計上しています。
これに対してIFRSでは「リスクと便益が買い手に移転したときに収益を認識」すると決められています。難しい言い回しですが、要は「買い手が物・サービスを受領したとき」に収益を認識するという考え方です。具体的な会計処理方法は今後明らかにされると思われますが、この考え方に従えば、例えば物品の販売については、多くの企業で適用している出荷基準ではなく、「顧客に商品が到着した時点」で売上を計上することになります。
② 研究開発費
企業が研究開発、すなわち試験研究や新商品を開発する過程で発生する費用については日本基準ではすべて「研究開発費」として、発生したときに費用計上しています。
しかしIFRSでは、「研究費」と「開発費」を分けて定義づけし、「研究費」は日本基準と同様にすべて発生時に費用とする一方で、特定の条件を満たし、将来の回収可能性があると認められる開発費用については「開発費」として資産に計上し、その上で規則的に償却すると定められています。
この資産計上の判断は、特定の条件を満たしているか否かの判断に基づくこととなりますが、実務的にこの判断を一律に行うことは困難であり、何が「開発費」にあたるかといった判断は今後議論を呼びそうな気がします。
③ リース会計
日本基準では、リース期間終了後に所有権が移転しないファイナンス・リースを、リースの借り手が資産として処理すべきか、リース料を費用として処理できるかは、数値基準によって定められています。中小企業の多くはこの基準で費用としているケースが多いのではないでしょうか。
IFRSでは、数値基準はなく、「実質的にリスクと便益が移転する場合」、すなわち企業が法的形式にかかわらずリース契約に基づく資産そのものを実際に自社所有の他の有形固定資産と同様に使用しているのであれば、リース資産として貸借対照表に計上することになります。
④ 金融商品・デリバティブ
企業が保有している株式や社債などの金融商品は、現行の日本基準では、「売買目的で保有する有価証券」など一部については時価で評価し、子会社や関連会社の株式などは取得原価で評価しています。
IFRSでは、時価等の公正価値での評価が要請されるものに加えて公正価値での評価を選択できるものがあり、時価等の公正価値による評価の範囲が広がる可能性があります。
この他にもM&Aに伴うのれん代の会計処理、退職給付会計(未認識の退職給付債務の認識方法)なども大きなインパクトのある会計処理として注目されていますが、いずれも表面的な基準の変更に留まらず、企業の経営行動をも変える変更になりそうです。当面の対象は上場企業の連結決算といわれていますが、取引相手となる中堅・中小企業にも影響があるものと考えます。今後の動向を注視していきたいところです。