IFRSとはInternational Financial Reporting Standardsの略で、正式には「国際財務報告基準」と訳されます。現在会計基準の世界標準として注目されており、日本でもIFRSの本格採用に向けて検討がなされていることは多くの方がご存知のことと思います。
今回は、このIFRSの基本的な考え方について紹介したいと思います。
IFRSでベースになっている考え方は、「原則主義」「賃借対照表重視」「公正価値会計」の3つです。
これは、IFRSの特徴であり、また現行の日本基準との基本的な会計に対する考え方や目的との相違点ともいえます。
1.原則主義
原則主義は、会計基準の概念を整理して原理原則だけを示し、詳細なルールは示さないという考え方です。具体的な取引の処理にあたっては、企業の経営実態を表すためにシンプルにまとめられた会計原則に沿って、各企業が判断することになります。詳細かつ厳格なルールがないので「楽」と思われがちですが、判断の拠り所が「シンプル」であればあるほどより高度な判断が必要になります。その意味ではIFRSは言うならば「大人の会計基準」と言えるでしょう。
2.貸借対照表重視
これは、損益計算より企業の資産・負債に重きを置く考え方です。3.の公正価値会計と表裏の関係にある考え方ですが、資産・負債を評価することが重視される会計です。日本の会計基準はどちらかといえばPL重視、すなわち企業の経営成績としての当期純損益を求めることを重視する立場でしたが、IFRSではBS重視、すなわち資産・負債の評価から当期純損益だけでなく企業価値の変動としての利益(包括損益)も計算することとなります。
3.公正価値会計
文字通り資産・負債を公正価値(時価)で評価する会計です。日本基準でも一部の金融商品については公正価値評価を行いますが、IFRSでは基本的には可能な限り資産・負債について公正価値で評価し、損益(包括利益)については取得価額(もしくは帳簿価額)と公正価値での評価額との差額として計算します。IFRSではPLに相当する計算書を「包括利益計算書」と言いますが、公正価値に基づく評価により発生したその他の包括利益を当期純利益に加えた「包括利益」を最終利益として表示することになります。
■包括利益
包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益
その他の包括利益=B/Sの純資産に直接計上される科目の当期変動額
(日本基準上「株主資本等変動計算書」の変動額に相当するもの)