今回は「ストックオプション(新株予約権)」の会計処理について概説します。
≪事例≫
平成19年5月の株主総会決議に基づき、6月1日、以下の条件の下に従業員50名にストックオプション(新株予約権(譲渡制限あり、公正な評価単価 100円/個))を付与し、21年5月に半分行使したが、残りは22年5月末に行使期間終了と共に未行使のまま失効した。1人当り100個、行使時の払込価格1株当り10円/個で付与。対象勤務期間:19年6月~21年5月、権利確定日:21年3月末、行使期間:21年6月~22年5月 退職見込者は20年3月末6名・21年3月末4名、21年5月末実際退職者は6名
≪仕訳≫
Ⅰ. 20年3月31日(決算日)
株式報酬費用(一般管理費) 183,333円 新株予約権(純資産の部) 183,333円
Ⅱ. 21年3月31日(決算日)
株式報酬費用(一般管理費) 200,000円 新株予約権(純資産の部) 200,000円
Ⅲ. 21年5月31日(権利確定日)
株式報酬費用(一般管理費) 76,667円 新株予約権(純資産の部) 76,667円
Ⅳ.21年6月(権利行使時)
現金預金 10,000円 資 本 金 240,000円
新株予約権(純資産の部) 230,000円 (資本組入額;会社法所定の最低限度額)
Ⅴ.22年5月31日(権利行使期間満了時・権利失効時)
新株予約権(純資産の部) 230,000円 新株予約権戻入益(特別損益) 230,000円
≪解説≫
人件費たる株式報酬費用は、以下の計算式の下で計算されます。
公正評価単価×交付株式数×(期末従業員数-退職見込)×経過月数/総月数―既計上額
資産を実際支出した対価等で評価していた頃は、支出がない以上、ゼロ評価でしたが、今日資産を企業価値、将来の経済的便益と捉えるため、支出がなくても、効用は同じだから、資産計上し、労働の対価と考えるので、対象就労期間等に比例して費用計上します。
なお、新株の代わりに、自己株式を渡すこともできます。
≪消費税≫
株式報酬費用は、給与等を対価とする役務提供とすれば、課税仕入れには該当しませんし、仕入税額控除の対象にもなりません。新株予約権自体資産の譲渡等には該当せず、不課税なので、新株予約権戻入益も課税対象外です。
吉田こと田中