NHK土曜ドラマの「監査法人」が人気です。第1回は見逃したのですが、これを見た皆さんから「公認会計士カッコいい」といわれ、第2回は家内と一緒に見ました。こどもは「ごくせん」派で、見てくれなかったのですが、親の仕事を知る上で、見て欲しいところでした。多分こどもは親がどんな仕事をしているか全くわかっていません。
第3回の日は家族でディズニーランドに行っていました。閉園まで粘り、エレクトリカルパレードを見ようと硬く約束したのに、途中からこどもが「ごくせん」を見たい、家内が「監査法人」を見たいと主張して、エレクトリカルパレードを途中で切り上げて帰ってきました。エレクトリカルパレードより重要度の高いテレビドラマなどこの世に存在しないと主張したのですが、否決されました。テレビはCMさえ我慢すればタダで見られるけれど、ディズニーランドに3人で入園するのは、それなりのお金を払っているわけで、私の常識からするとありえない判断でした。
この日はディズニーランドが大混雑していたという理由もあるのですが、高い金を払って、エレクトリカルパレードを途中で切り上げて帰ることに納得いかず、私はふてくされて「ごくせん」も「監査法人」も見ずに新聞を読んでいました。
「監査法人」の第2回だけ見た印象ですが、確かに面白いと思います。昔監査法人に勤務していた頃を懐かしく思いながら見ていました。突っ込みどころもあるのですが、監査法人・企業の人物像を象徴的に描いており、現実はもっと公認会計士は人間味があるのですが、ドラマはそういうものかなと思います。ただ、個人的には、上場企業の社長が監査初日に監査チームを玄関で出迎えたら、「この会社めちゃくちゃ怪しい」という心証を得ると思います。
弊事務所は任意監査も少々あるのですが、基本的には中小企業のお客様の税務・会計相談が主な業務です。当然、メンバーも税理士を主体としています。では、監査は全然関係ないかというと、そうでもないのです。基本的には粉飾はご納得いただき、止めていただく立場を取ります。ただ、会計事務所として、粉飾を抑える理由は、将来発生するであろうリスクの回避にあります。ここでのリスクは、税務署・銀行および債権者に対する開示にあります。粉飾した決算書で税務上否認を受ける、審査が通って融資を受ける、信用されて取引が開始されるといったことを回避しなければ、損害賠償リスクがあるのです。
このリスクを回避するために、会計事務所は原則として、税務上許容される処理に重点をおきます。したがって、税務上はOKだけれども、会計上は粉飾とはいわないまでも疑わしい処理はあります。そういう申告書も承認します。退職給付引当金、賞与引当金が計上されていなくても常識的には中小企業ではスルーです。これを粉飾といわれても困るというのが本音のところです。
「監査法人」で描かれている「ぬるま湯監査」派になると思われるのですが、それが実態です。
なによりも、お客様の成長発展をお手伝いする立場にあるため、このようなポジション取りになります。
家族に今度はエレクトリカルパレードを見ようねと提案したら、こどもが「ディズニーランドはこども向けだからこれからはディズニーシーにしよう」といわれてしまいました。次にエレクトリカルパレードを見られるのは、20年後、30年後に孫ができたときかもしれません。
長生きしなければ。