Q:簡易合併、略式合併の手続は、どのような手続で行われますか。 A: 簡易合併は、一定の要件を満たす吸収合併において、存続会社の取締役会決議で合併できる簡易な合併手続のことです。簡易合併手続の内に、株主総会決議事項である定款変更および役員選任の手続を含めることはできません。 一定の数の株式を有する株主が反対の意思を通知した場合、総会決議なくして合併をすることはできません。 支配関係にある会社間の合併では、略式合併の活用が適しています。 1.簡易合併 (1) 要件 (a)交付する存続会社株式数の数に一株当たり純資産を乗じた額、(b)交付する存続会社の社債、新株予約権、新株予約権付社債の帳簿価額の合計額、(c)交付する株式等以外の財産の帳簿価額の合計額、これらの合計が存続会社の純資産額として法務省令により算定される額の5分の1を超えない場合は、株主総会の決議が必要なくなります。 ただし、合併差損が発生する場合、交付する株式が譲渡制限株式で存続会社が公開会社でない場合は、簡易合併は認められず、株主総会決議が必要となります。 さらに、譲渡制限会社でなくとも、譲渡制限を付した種類株式を発行している場合も、当該種類株式の種類株主総会の決議が必要になります。 (2) 会社法上の手続 簡易合併であっても、消滅会社では通常の吸収合併手続きが必要です。 ① 存続会社では、合併承認総会がありません。 ・ 存続会社では、合併契約書の承認は取締役会決議のみで足ります。 ② 合併契約の締結 ・ 株主総会の承認を得ずに合併を行う旨の記載は特に求められていません。 ・ 定款変更・取締役の選任など、もともと株主総会決議が必要とされる決議事項が契約書に記載される場合は株主総会の承認が必要となります。簡易合併を行うことを前提としている場合は、このような事項は契約書に記載できません。 ③ 債権者保護手続 通常の合併手続きと同様です。 ④ 株式買取請求 通常の合併手続きと同様です。 2.略式合併 (1) 要件 存続会社が消滅会社の特別支配会社である場合の吸収合併、消滅会社が存続会社の特別支配会社である場合の吸収合併については、株主総会の決議を必要としません。 ここで、特別支配会社とは、会社および会社が発行済み株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人が、他の会社の総株主の議決権の90%(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を有している場合の当該会社を指します(当該他の会社を支配会社とします)。 (2) 少数株主の保護 略式合併の場合は、簡易合併のような異議の制度がありません。そのため、少数株主保護のため、一定の場合で、消滅会社株主が不利益を受けるおそれがあるときは、当該株主は合併差止めを請求できます。一定の場合とは、合併が法令または定款に違反している場合、合併条件が合併当事会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当な場合です。 (3) 合併スケジュール 会社法では、簡易合併や略式合併に関して、通常の合併と異なる制度を定めているのではなく、一定の要件を満たす場合に、合併に関する株主総会決議を省略するものとするものです。したがって、合併スケジュールは通常の合併と基本的には、同様であり、株主総会に関する手続きが省略できる点のみが異なります。