平成21年の税制改正で「取引相場のない株式等の係る相続税の納税猶予制度」の
導入が検討されていますが、あわせて、相続税の課税方式を現在の「併用方式」
から「遺産取得課税方式」に抜本改正される可能性が出てきました。
現在の併用方式とは、法定相続分課税方式とも呼ばれ、お亡くなりになった方
(被相続人)が残した財産の合計に対して基礎控除や課税価格の減税措置を適用
した後の金額を法定相続人の人数で割り、各相続人の相続税額を計算します。その
上で、各相続人の相続税額を合算して、実際に各相続人が相続した財産の割合に
従って相続税額を按分するという計算方法です。
これに対して、遺産取得課税方式とは、被相続人が残した財産について、相続人
の間で分割し、各相続人が実際に相続した財産ごとに相続税の計算をするという方法
です。具体例を挙げて計算方法を見てみましょう。
<具体例>
遺産総額 4億円
相続人 子供2名(Aさん、Bさん)
相続割合 4億円のうちAさんは3億円、Bさんは1億円を相続
※基礎控除及び税率は変更なしと仮定して計算
現在(併用方式) 遺産取得課税方式
(1)遺産総額-基礎控除 (1)各人の課税対象額(基礎控除は人数割と
4億円-(5,000万円+1,000万円×2名) 仮定:7,000万円×1/2=3,500万円ずつ)
=3億3,000万円 A:3億円-3,500万円=2億6,500万円
(2)1人当りの相続税額 B:1億円-3,500万円=6,500万円
3億3,000万円×1/2=1億6,500万円 (2)各人の相続税額
1億6,500万円×40%-1,700万円=4,900万円 A:2億6,500万円×40%-1,700万円
(3)相続税の総額 =8,900万円(22.2%)
4,900万円×2人=9,800万円 B:6,500万円×30%-700万円=1,250万円
(4)各人の相続税額 (3.1%)
A:9,800万円×3億円/4億円=7,350万円(18.3%※)
B:9,800万円×1億円/4億円=2,450万円(6.1%)
※各人の相続税額/遺産総額
相続税の納税猶予制度が創設された場合、現在の併用方式では後継者以外の
相続人の相続税の税負担も軽減することが可能であるため、遺産取得課税方式
への見直しが検討されることとなったようです。まさにアメとムチですね…。
事業財産承継部 樋渡順 0120-944-733
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