今回は同族株主が相続又は遺贈により無議決権株式を取得した場合の評価方法についてお話します。
原則は普通株式と同様に評価します。ところが次のイ、ロ、ハのすべての条件を満たす場合に限り、相続時の納税者の選択により原則の評価額から5%減額することができます。
ただしこの場合、減額した5%は同じ相続の際に議決権のある株式を相続した人の、その株式の評価額に加えなければなりません。
「議決権のある株式」と「議決権がない株式」が同じ評価額というのも違和感がありますよね。相続人みんなが合意できるなら5%の範囲内で調整できますよということです。
【 条 件 】
イ.当該会社の株式について、相続税の法定申告期限までに、遺産分割協議が確定していること。
ロ.当該相続又は遺贈により、当該会社の株式を取得したすべての同族株主から、相続税の法定申告期限までに、当該相続又は遺贈により同族株主が取得した無議決権株式の価額について、調整計算前のその株式の評価額からその価額に5%を乗じて計算した金額を控除した金額により評価するとともに、当該控除した金額を当該相続又は遺贈により同族株主が取得した当該会社の議決権のある株式の価額に加算して申告することについての届出書が所轄税務署長に提出されていること。
ハ.当該相続税の申告に当たり、評価明細書に、調整計算の算式に基づく無議決権株式及び議決権のある株式の評価額の算定根拠を適宜の様式に記載し、添付していること。
う~ん、難しいですね。平たく言いますと
イ.今回の相続等で相続人が分ける財産のうち、この会社の株式については相続税の申告期限である被相続人死亡後10ヶ月以内に相続人みんなでどう分けるか決まっていること。
ロ.評価額を5%調整することを、今回の相続等でこの会社の株式(議決権の有無を問わず)をもらう相続人が全員納得して、所轄の税務署長に届出書を死亡後10ヶ月以内に提出すること。
ハ.相続税申告書にロの調整する金額の根拠を示した書類を添付すること。
具体的な計算は以下の通りです。設例の会社は議決権のある普通株式と無議決権株式の2種類の株式を発行しており、どちらの株式も同じ配当権を持つものとします。
【 設 例 】
① 評価する株式の通常(5%調整前)の評価額
普通株式 (議決権あり・配当あり) 4,000円
無議決権株式(議決権なし・配当あり) 4,000円
② 発行済株式数 70,000株(亡くなるまで被相続人所有)
内 普通株式(議決権あり・配当あり) 20,000株
無議決権株式(議決権なし・配当あり) 50,000株
(注)自己株式はないものとします
③ 上記株式の相続の状況
長男Aが普通株式20,000株を相続、次男B、三男Cが無議決権株式をそれぞれ25,000株ずつ相続します。
【 計 算 】
1 無議決権株式の評価額(単価)・・・5%減額します
4,000円 × 0.95 = 3,800円
2 議決権のある普通株式への加算額
4,000円 × 50,000株 × 0.05 = 10,000,000円
3 議決権のある普通株式の評価額(単価)・・・減額した分を加えます
(4,000円 × 20,000株 + 10,000,000円) ÷ 20,000株 = 4,500円
【 ま と め】
各人が相続した株式の1株あたりの評価額は以下の通りとなります。
Aさんが相続した普通株式の評価額 単価 4,500円
Bさんが相続した無議決権株式の評価額 単価 3,800円
Cさんが相続した無議決権株式の評価額 単価 3,800円
また、各人が相続した株式の評価額総額は以下の通りとなります。
Aさんの相続した株式評価額総額 4,500円 × 20,000株 = 90,000,000円
Bさんの相続した株式評価額総額 3,800円 × 25,000株 = 95,000,000円
Cさんの相続した株式評価額総額 3,800円 × 25,000株 = 95,000,000円
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