佐藤愛子氏の心に響く言葉より…
若い頃のおしゃれは、“美しく見せる”ことが目的である。
しかし中年のおしゃれは、人にどう見られるということよりも、心にハリを持たせ自分を励ますことに意味があるように私は思う。
私は夫の倒産で無一文になってから、赤い服を着るようになった。
それまでの私はどちらかというと地味好みで、黒か茶系統の服ばかり着ていたのだ。
それが急に派手になったので、人々は驚いて、
「ボーイフレンドでも出来たのではないか」
などといったが、下衆(げす)の勘ぐりとはまさにこういうことをいう。
昔むかし、斎藤別当実盛(さいとうのべっとうさねもり)は源義仲との戦いに七十三歳にして白髪を染め、錦のひたたれを着て出陣したという。
まさに私もその実盛の心境で、我と我が身を励まして苦境と戦い、勝つために錦のひたたれを身につけているのである。
“愛子のおんな大学”
『そもそもこの世を生きるとは』海竜社
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