けいです♪
特攻を言い渡された男のお話です。
鹿屋に着いたその日、二日後の出撃を言い渡された。動揺はなかった。
ただ母に会って別れを告げることが出来ないのが心残りだった。その夜、母に遺書を書いた。
次の日、私は基地の外を散歩した。集落を離れ、山の方を歩いた。
暑い日だった。しかし流れる汗さえ心地よいと思った。もう明日からは汗をかくことさえない。
目に入るすべてのものがいとおしかった。
何もかもが美しいと思った。道ばたの草さえも限りなく美しいと思った。
しゃがんで見ると、雑草が小さな白い花を咲かせているのが見えた。小指の先よりも小さな花だった。美しい、と心から思った。
その花は生まれて初めて見る花だったが、この世で一番美しい花ではないだろうかと思った。
小川があった。靴を脱いで、足を流れの中に入れた。水の冷たさが心地よかった。両足を水に浸したまま川縁に寝そべった。
瞼を閉じると、蝉の声が聞こえた。蝉がこんなにも美しく鳴くものかと初めて気がついた。この蝉の子どもたちは七年後の夏にも同じように鳴くのだろうなと思った。
その時、日本はどうなっているのだろうかと考えると、たまらなく切ない気持ちになった。
「永遠の0」
百田 尚樹 著
講談社文庫より
雑草さえも、この世で一番美しい花ではないだろうかと思える。
いつも見ているもの、
いつも近くにいる人、
あたりまえじゃなく、有り難い存在なんですね。
そういえば子どもの頃は、雑草や葉っぱや虫さえも、ワクワク、キラキラ、見ていたなぁ~。
今、生きていること、生かされていることに感謝します♪
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